統合失調症発症の働き解明?

統合失調症発症の働き解明 タンパク質が神経発達促進

以下は、記事の抜粋です。


統合失調症発症にかかわる脳内のタンパク質の働きを解明したと、愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所(同県春日井市)が7月9日発表した。米専門誌の電子版にも掲載された。新しい治療法の開発に役立つ可能性があるとしている。

統合失調症は幻覚や妄想を症状とする精神疾患で100人に1人の割合で発症。神経伝達物質の分泌異常や、脳神経の発達障害が原因とされてきたが、詳しい発症メカニズムは分かっていない。

同研究所は、脳の神経細胞間で情報をやりとりする「シナプス」にあるタンパク質「ディスビンディン―1」に着目。

発症への関与が指摘されながら詳しい働きは未解明だったが、マウスの神経細胞を使った実験で、このタンパク質の量を減らすと、シナプスで情報を受け取る組織が、正常に発達しないことが判明。逆にこのタンパク質を補充すると、組織の機能が回復することも分かったという。


元論文のタイトルは、”Dysbindin-1, WAVE2 and Abi-1 form a complex that regulates dendritic spine formation”です(論文をみる)。以下は、論文の要約です。


dysbindin-1 (dystrobrevin-binding protein-1)の遺伝的変異は、統合失調症に関連するとされる変異の中でもっとも多く報告されるものの一つである。統合失調症は、シナプス連結性の異常から生じる神経発達異常と考えることもできるので、神経発達におけるdysbindin-1の機能の解明を試みた。

研究者らは、ウェスタンブロットを用いてdysbindin-1の発達に伴う変化を調べた。その結果、50 kDaのアイソフォームが胎児期に高発現し、40 kDaのものは生後11日に発現しはじめその後増加することが明らかになった。

免疫蛍光観察解析の結果、dysbindin-1が培養ラット海馬神経細胞のスパイン様構造物に集積していることが明らかになった。研究者らは、WAVE2がdysbindin-1に結合すること、さらにAbi-1というスパインの形態形成に関与するWAVE2結合タンパク質がdysbindin-1と相互作用することも明らかにした。

dysbindin-1とWAVE2とAbi-1の3つのタンパク質は、複合体を形成するが、dysbindin-1はWAVE2のAbi-1への結合を促進する。RNAiを用いてdysbindin-1をノックダウンすると異常に伸張した未成熟な樹状突起が形成された。

今回の結果は、dysbindin-1が後シナプスにおいて、WAVE2およびAbi-1との相互作用を介して樹状突起形成を制御することを示唆している。


培養ラット海馬神経細胞を用いた基礎的な実験報告ですが、なぜ「統合失調症発症の働き解明」というわけのわからない新聞記事になったのでしょうか?その原因の一つと思われる愛知県の発表をみつけました。

以下は、愛知県の発表の抜粋です(発表をみる


この研究成果は、統合失調症の原因究明につながる可能性を提示する世界初のもので、このたび、国際的学術専門誌に評価されました。

掲載雑誌:Molecular Psychiatry
※Nature出版社の月刊誌。精神医学・神経科学におけるトップジャーナルに位置付けられる。インパクト・ファクターは15.049。

1 研究で明らかにしたこと
(省略)
2 研究の意義
統合失調症の病態の理解を深め、新たな治療法開発の可能性を切り開いた。また、自閉症の病態の一部は統合失調症と重複することが指摘されていることから、自閉症の病態の理解にも新たな視点を与えることにもつながる。


こういう発表をしなければならない状況に多くの研究者が置かれていることは、いろんな意味でとても悲しく腹立たしいことだと思います。

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