近視進行抑制にアトロピン点眼、注目集まる
以下は、記事の抜粋です。
ATOM-J Studyは、多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対象並行群間比較試験。6~12歳の学童を、0.01%アトロピン1回/日点眼群(84人)とプラセボ1回/日点眼コントロール群(84人)に分けて、1日1回点眼し、24カ月後の屈折値変化を比較した。その結果、屈折値変化はそれぞれ-1.26D、-1.48Dで、両群間には有意差(P<0.001)を認めた。
世界の近視人口は、推計で2000年の14億600万人(22.9%)から、2010年には19億5000万人(28.3%)と急増している。中でもアジア圏、とりわけ日本の有病率も、ここ数十年で著しく増加している。近視の有病率は年齢とともに高まり、中学生では56.0%(2018年)、高校生では67.2%(同)となっている。
近視が強度になると様々な眼疾患を発症しやすくなる。具体的には、網膜剥離、近視性黄斑変性、緑内障などに罹患しやすいことが知られている。
アトロピン点眼薬の近視進行抑制効果については、シンガポールでの大規模試験が有名だ。しかし1%アトロピン点眼では、調節麻痺により近用眼鏡が必要となったり、瞳孔の拡大によって強い羞明が生じるなど、日常生活に不便が生じることがある。さらにアトロピン点眼の中止から1年後には、眼軸長の大幅な伸長と近視の急激な進行(リバウンド)が認められている。
そこで、アトロピン濃度を下げ、0.1%、0.05%、0.01%の3種類を使って行われたのが「ATOM-2」試験だ。その結果、近視の進行抑制効果は濃度依存的に高くなったものの、0.01%点眼でも進行抑制効果が認められた。また、羞明やアレルギー性結膜炎などの副作用の出現頻度は、0.01%が最も少なく、0.1%や0.05%で見られたリバウンドは、0.01%では認められなかった。
近視抑制の効果が認められつつも、比較的副作用が少なく、リバウンドが見られないことが確認された「0.01%」を採用して実施されたのが「ATOM-J」試験(「近視学童における0.01%アトロピン点眼剤の近視進行抑制効果に関する研究(ATOM-J Study)」(責任医師:京府医大、木下茂氏))だ。
6~12歳の男女学童(等価球面度数が-1.00~-6.00D)を、0.01%アトロピン点眼群とプラセボ群にランダムに割り付け、両眼に1日1回、2年間点眼し、近視の進行程度が比較された。その結果、プラセボ群に比べて、近視の度数、眼軸長ともに統計学的に有意な進行抑制が見られた。
近視の進行抑制をターゲットとしたアトロピン点眼薬の治験は、参天製薬が既に始めている。これまでの近視進行抑制治療は、ほとんどが保険収載されておらず自費診療だったが、低濃度アトロピン点眼薬が承認され薬価収載されれば、近視の進行抑制が保険診療で行えるようになる。今回の研究の成果は、その第一歩ともいえそうだ。
軽度の近視だった私は、高齢になっても老眼鏡なしで近くのものをみることができます。一方、近視ではなかった友人の多くは、本やスマホをみるのに老眼鏡を必要とする不自由な生活を送っています。
また、この記事で問題になっているような、つまり網膜剥離、近視性黄斑変性などのがん疾患に発展するような強度の近視がアトロピンの点眼で防げるというエビデンスはまだありません。また、教科書に載っているような知識ですが、緑内障にはアトロピンは禁忌です。驚いたことに、既に「低濃度アトロピン0.01%点眼薬を用いた近視抑制治療」を自由診療で行っている医院がありました(サイトをみる)。
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