脂肪酸系燃料の植物バイオマスからの微生物生産

大腸菌から作ったバクテリア、安価なグリーンエネルギー供給源として期待

以下は、記事の抜粋です。


農業廃棄物を摂取してディーゼルを分泌するバクテリアを開発したと、Lawrence Berkeley国立研究所などの研究チームが1月28日のNatureに発表した。現在のバイオ燃料よりも安価で環境にも優しい代替燃料として有望だという。

このバクテリアは、大腸菌の遺伝子を操作して作製されたもの。木片やわらに含まれるバイオマス廃棄物を分解し、燃料分子を分泌するという。

論文を執筆したJay Keasling氏によると、バクテリアは細胞からバイオディーゼルを分泌してくれるので、細胞を破壊する必要がなく、コストの大幅節約につながるという。

論文は、環境への影響やコスト試算などは示していないが、バクテリアが量産されれば1~2年以内の商用化は十分可能としている。

論文は、大腸菌の「わずかな遺伝子操作」により、ほかにも2種類の化学物質(脂肪アルコールとアルデヒド)を生成することが可能だと述べている。これらの物質は、石けん、洗剤、化粧品の添加物、香水、風味化合物などに広く使用されている。


元論文のタイトルは、”Microbial production of fatty-acid-derived fuels and chemicals from plant biomass”です(論文の要約をみる)。

費用対効果の高い「統合的バイオプロセス」による高エネルギー燃料の微生物生産をねらった研究です。

脂肪酸は、長いアルキル鎖からなる天然の「石油」で、現在は動植物油から分離され、燃料から油脂化学物質までのさまざまな製品群の生産に使われています。

研究では、大腸菌の遺伝子組換えにより、任意の構造をもつ脂肪酸エステル(バイオディーゼル)、脂肪アルコール、および蝋(ろう)が、単糖類、さらには植物由来バイオマスから直接生産できることを示しています。

具体的な遺伝子組換え操作としては、以下の5つです。
1.脂肪酸分解酵素をコードするfadE遺伝子のノックアウト。
2.脂肪酸を合成するチオエステラーゼとアシルCoAリガーゼの過剰発現。
3.脂肪酸アルコールを合成するための脂肪アシルCoA還元酵素の過剰発現。
4.エステル合成のためのアシル基転移酵素とアルコール合成系酵素(2つ)の過剰発現。
5.植物に多く含まれるヘミセルロースを分解するキシラネース(xylanase)を過剰発現して分泌するための2つの遺伝子を発現。

アメリカでは、これらの遺伝子組換え操作を経てつくられたバイオディーゼル分泌などを分泌する大腸菌は、NIHガイドラインによると、「遺伝子組換え生物」ではありません。

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