日本発「MEK阻害剤」トラメチニブ、FDA承認取得

日本発「MEK阻害剤」トラメチニブ、FDA承認取得
以下は、記事の抜粋です。


世界最初のMEK阻害剤へ
日本たばこ(以下JT)は、グラクソ・スミスクライン社(以下GSK)へ導出しているMEK阻害剤(一般名:トラメチニブtrametinib)を有効成分とする経口剤が、米国FDAの承認を取得したと、5月30日発表した。アメリカでの販売名はMekinist。MEK阻害剤として世界で初めて承認を取得した医薬品となる。

がん細胞の増殖を抑制するMEK阻害剤
トラメチニブは、JTと京府医大 酒井敏行教授が見出した薬剤。ERK MAPキナーゼ経路(Raf-MEK-ERK)に存在するリン酸化酵素MEKを阻害し、がん細胞の増殖を抑制する。2006年にGSK社へ全世界への独占的開発権・商業科権を導出。2012年に「BRAF V600遺伝子変異陽性の切除不能あるいは転移性のメラノーマ」を適応症として、GSK社が同経口薬の新薬承認を申請した。

悪性度の高いメラノーマに適応
メラノーマは、皮膚の色素細胞メラノサイトががん化したもので、速い速度で周辺の組織に広がる。転移した場合には致死率が最も高いがんである。欧米では10万人に15~20人と多い。今回対象となる「BRAF V600遺伝子変異陽性」とは、細胞増殖に関与するBRAF蛋白を作る遺伝子の変異。転移性メラノーマ患者の約50%にBRAF V600E及びV600Kに変異が認められる。


トラメチニブの臨床試験結果を報告する論文は、本ブログでも紹介しました(記事をみる)。化学療法と比較して、BRAFV600E変異またはBRAFV600K変異を有する転移性メラノーマ患者の無増悪生存率と全生存率を改善したことが報告されています。

以前にも書きましたが、他のキナーゼ阻害薬の多くがATP結合を阻害するのと異なり、この薬はBRAFによるMEKの活性化とMEKの基質への作用をアロステリックに阻害します。また、治療に反応する患者の率が22%と低いことや、BRAF阻害薬に抵抗性を示すメラノーマにも無効であるなどの問題があることも知られています。

JTがこの薬の創薬に貢献したことは知りませんでした。皮膚がんでは、有棘細胞がんと基底細胞がんは喫煙によって発症リスクが上昇する可能性がありますが、メラノーマと喫煙の関係は知られていないので、マッチポンプではなさそうです。

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