「事業仕分け」では、11月11日に湿布・うがい薬とともに漢方薬の保険適用を外す方向性を打ち出しました。その理由は、調剤薬局やドラッグストアでも類似薬として販売されているため、医師が処方を出すことによって保険を適用させる必要性が低いというものです。
これに対して以下のように、多くの反対運動が展開され、長妻厚労相は11月29日、「漢方薬についても市販の物を買って保健から外しなさいと、こういうようなご指摘もあると聞いているが、そのまま受け入れるというのはなかなか難しい」と発言したそうです。
耳を疑った「漢方除外」 臨床医の8割処方 現状把握せず
漢方薬の保険外し、漢方業界の現状を知る契機にすべき
漢方薬保険外に4万人以上の反対署名 厚労省に提出へ
厚労相、漢方は保険適用外「問題ある」
各記事にある漢方薬保険外の反対の理由を以下にまとめます。
●医師が処方する漢方薬は市販の漢方薬と同じではない。
●西洋医学・漢方薬の併用によってガンをはじめとする難病治療が可能になっている。
●国民の健康を守るためになくてはならない。
●臨床医の約8割が通常の医薬品として、漢方薬を処方しているという現状を全く把握していない。
●漢方薬を健康保険適用から外すというのは、財務省の思惑である。
●東洋医学に目を向け始めている世界の流れに背く行為。
●漢方医学の現状を知らない人の議論だ。
●重要な治療手段となった漢方薬を医師の手からもぎ取る暴挙。
●民主党のマニフェストには『漢方を推進する』と書かれており、国民に対する裏切り行為だ。
●医療現場は患者を検査した上で、副作用も確認するので、医師による処方が重要。
これらに対して、批判的な意見もあります。
漢方薬に保険が効くようになった経緯
漢方薬の保険適用除外と混合診療問題
漢方薬の署名活動に対する疑問
以下に、批判をまとめます。
●治療を受ける方の負担も大事だが、保険料を支払う国民全体の負担も大事。
●漢方薬はそれぞれの効果が不透明なまま、無審査で政治的に保険が適用された。
●保険適用外に反対する漢方製薬メーカー、漢方医は個々の漢方薬の効果について二重盲検法でデータを提出すべき。
●漢方薬の効果についてのデータを見て、有効なものだけ保険適用にする。
●データに基づかず、署名運動など政治的な圧力での保険続行は禍根を残す。
混合診療禁止の原則について
現在の混合診療禁止の原則の下では『健康保険が適用される部分とされない部分が混在することは許されない』ので、保険適用除外になった分の漢方薬は、医師が処方することは困難になります。
すなわち、保険適用外の薬を組み合わせると、他の医療行為も含めて全て「自由診療」扱いになってしまうので、医者は適用除外分の漢方薬の処方箋が書けないことになります。これは、湿布・うがい薬も同じです。
危機的状況にある保険診療を維持するためには、収入増措置としての保険料率の引き上げ、支出減措置としては、自己負担率の増加あるいは、保険適用外の増加しかありません。
国や地方自治体からの支援が期待できないとすれば、医師の指導が不要な医薬品や科学的根拠の薄弱な医療行為を保険適用外とすることが最も合理的です。湿布・うがい薬などを適用外にできるのであれば、エビデンスのない漢方薬も同様にあつかうべきです。
現在病院で処方されている多くの薬物が適用外となる場合は、混合診療の禁止をやめて、保険診療と適用外の薬を組み合わせられるようにする必要があります。
日本医師会は、混合診療の容認に反対していますが、私にはあまり説得力があるようには思えません(日本医師会の混合診療に対する意見をみる)。
現実には、がんの粒子線治療費(288万3千円:1部位のがんに対する一連の照射費用)は保険適用外ですが、先進医療の適用をうけることで保険診療と組み合わせられます。すでに、医師会のいう「すべての国民が公平・平等により良い医療を受けられる環境」は崩壊しています。
最後に漢方薬についてですが、OTCとして売られている保険適用外のものと、保険適用されているものとの間に成分上の違いはほとんどありません。また、漢方かぜ薬として有名な「葛根湯」にはアンフェタミンと良く似たエフェドリンが成分として多く含まれています。ファンが多いはずです(^_-)☆。やはりもう一度、科学的な眼でその有効性を判定しなおす必要があると思います。
コメント
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漢方に関わる組織に所属している僕は、第2回目の締め切りに向けて、より多くの人にこのことを知ってもらえるよう、署名活動のお手伝いをしています。いろんな面からこの問題をとらえていて、とても興味深く読ませていただきました。
署名に関して→http://kampo.umin.jp/ 宣伝、失礼いたしました ('~`;)