掻けば掻くほど痒くなるのはなぜなのか?
少し古い話ですが、知らなかったので紹介します。以下は、記事の抜粋です。
セントルイスのWashington大学の研究チームは痒いところを掻くことにより、脳内ではセロトニンが分泌され、このセロトニンの効果により痒みは更に増すことを実証することに成功した。
この掻けば掻くほど痒くなるという反応連鎖はまた、ヒトにおいても同様に起こることになるだろう。また、研究チームはこの連鎖の輪から抜け出す方法も発見した。この方法は特に、痒みが酷い人にとっては朗報となるだろう。
元論文のタイトルは、”Descending Control of Itch Transmission by the Serotonergic System via 5-HT1A-Facilitated GRP-GRPR Signaling”です(論文をみる)。
私も「掻けば掻くほど痒くなる」のは実感しています。論文では、この作用は中枢でのセロトニンという神経伝達物質とその5-HT1A受容体を介していると結論しています(少なくともネズミで)。
臨床に用いられている中枢でのセロトニン5-HT1A受容体作動薬としては、抗不安薬のタンドスピロン (tandospirone、セディール®)があり、日本と中国で発売されています。「自己受容体に部分アゴニストとして作用」という「どっち向きに効くのか」よく分からないメカニズムだと書いてあります。副作用をみると「かゆみ」はありますが、肝臓の重い症状の1つとして書かれているだけです。これはどう考えても中枢での痒み増強ではなさそうです。
あと、中枢のセロトニン系に働くのは抗うつ作用のあるSSRIです。この場合は、セロトニンの再取り込みを阻害してソロトニン神経伝達を促進します。SSRIのパロキセチン(パキシル®)フルボキサミン (ルボックス®)には「かゆみ」の副作用がありますが、同じくSSRIのセルトラリン(ジェイゾロフト®)とエスシタロプラム(レクサプロ®)にはありません。これらの事実を考えると、この論文の結果をヒトへそのまま当てはめるのは難しいかもしれません。個人的にはもっと末梢レベルの話のような気がするのですが、、、
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