アルツハイマー病患者の脳血流に対するニルバジピンの効果
以下は、論文の要約です。
アルツハイマー病の初期に脳血流量(cerebral blood flow、CBF)が低下することが知られており、この血流低下がアルツハイマー病の進行を加速するとも考えられている。
このランダム化プラセボ対照比較試験は、Ca拮抗薬(ニルバジピン、nilvadipine)の6カ月間投与が軽度から中等度のアルツハイマー病患者のCBFに与える影響を調べたものである。
58人のアルツハイマー病患者の中、MRI検査に適応した44人を対象に、ニルバジピン投与群またはプラセボ投与群(それぞれ22人)にランダムに割り付けて6カ月間観察した。
44人の平均年齢は72.8±6.2歳、30点満点のミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination、MMSE、24点以上が正常、10点未満では高度な知能低下、20点未満では中等度の知能低下と診断)の平均値は、20.4±3.4だった。
ニルバジピン投与は、収縮期血圧の平均値を11.5mmHg低下させ、海馬の血流量を約20%増加させたが、その他の脳部位では脳血流量に両群間で差はみられなかった。
これらの結果は、アルツハイマー病においても大脳の自己制御機構が保存されていることだけではなく、降圧薬が脳血管系に対して良い影響を持つ可能性を示唆している。
論文要約だけを読むと、降圧薬なら何でも脳血管系に良い影響があるように思われるかもしれませんが、論文の議論部分では、同じCa拮抗薬でもニルバジピンは血液脳関門を越えて脳血流量を増やすが、アムロジピンは血液脳関門を越えずに脳血流量を減らすことが報告されていると書かれているのでので、降圧薬なら何でも良いというわけではなさそうです。
ニルバジピンのアルツハイマー病対する効果が確認されれば、血液脳関門を越えるCa拮抗薬の開発が進むと思います。
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