藻から作るバイオ燃料、ヒトゲノムを解読したベンター博士の秘策
J.クレイグ・ベンター博士(John Craig Venter, PhD、以下ベンターと略)は、1946年生まれ、ベトナム戦争に従軍、従軍中に自殺未遂。帰国後、カリフォルニア大学サンディエゴ校などで生化学を学び、1975年に生理学・薬学でPhD取得。
ニューヨーク州立大学を経て、1984年、国立衛生研究所(NIH)に移り、1991年には、多数のExpressed Sequence Tag(EST)断片を特許出願し、物議をかもした。
翌年NIHを辞め、The Institite for Genome Research(TIGR)を設立。TIGRは1995年、生物種としては初めて、インフルエンザ菌の全ゲノム配列を決定した。1998年には、パーキン・エルマーの出資によりセレラ・ジェノミクス(Celera Genomics)を創立し、初代会長となった。
1999年には、各国の研究者が協力するヒトゲノム計画(HGP)が進む中で、セレラは自前のHGPを開始し、2001年に全ゲノムの解明に成功した。ゲノム解析の速さと1会社が全世界を相手に対等に戦ったことが高く評価された。しかし、2002年、ベンターは経営陣と対立しセレラを解任された。
以上は、Wikiによる情報。
2005年、ベンターは、エネルギー生産などに役立つ微生物の創出を目的とするベンチャー企業として、Synthetic Genomics Inc.(SGI)を設立しました。
SGIのAbout Synthetic Genomicsには、2007年の講演でのベンターの言葉、”I believe the best examples of disruptive technologies that could change our future are in the new fields of synthetic biology, synthetic genomics, and genome engineering.(私は、未来を変えることができる破壊的革新技術の最善例は、合成生物学、合成ゲノム学、そしてゲノム工学という新しい領域に存在すると信じる。)”が引用されています。
紹介した記事は、エクソン・モービル(日本では「エッソ」)が、SGIの”Next Generation Biofuels Using Photosynthetic Algae”プロジェクトに対して、巨額の投資契約をしたというニュースです。藻類(algae)とは、水中で酸素発生型の光合成をする簡単な生物の総称で、植物を除いたものです。
簡単に言えば、ベンターのアイディアは、「空気中のCO2を光のエネルギーを使って油に変えるような新しい藻類」をゲノム工学によって創ろうとするものです。これが実現すれば、イラクを含めて世界中が変りますね。
私は、1980年代前半、彼がまだムスカリニック受容体を研究している時の講演を聞いたことがあります。その後ずっと注目しています。コミュニティー・カレッジ出身、ベトナム従軍という異色の経歴をもつことは、このブログ記事を書いて初めて知りました。新しい挑戦の成功を楽しみにしています。
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