この記事のきっかけになったという誰かのコメント、『日本の大手医薬品メーカーですら、世界から見れば上位ランクインすら難しい』は、一般の人には驚きの事実のようです。
確かに、下のグラフをみると、日本の有名な製薬会社は、どれも世界のベスト10に入っていません。武田薬品工業の17位が最高で、塩野義製薬や大日本住友製薬などは50位以下で、グラフにも出てきません。一方、ジェネリック中心のテバ製薬(イスラエル)やマイラン(米)はそれぞれ19位、31位です。
上のグラフは、ユート・ブレーンの調査による情報に基づいています(ユート・ブレーンの記事をみる)。ユート・ブレーンの記事は、「新薬の登場よりも、パテント切れのペースが速く、全体的な成長時代は終わり、成熟期に入った。」という論調で書かれています。
売り上げトップのリピトールの例を紹介します。2006年、ファイザーのリピトール(atorvastatin、HMGCoA還元酵素阻害薬、抗高コレステロール薬)の世界総売り上げは136億ドルに達し、医薬品の歴史上最高の売上を記録した医薬品となりました。リピトールの2008年の米国売上高は、63.3億ドルです。しかし、2012年には20億ドルを割り、2013年には5億ドルまで減る可能性があります。これは、2011年にジェネリックの登場が予想されるからです。
5月14日の記事「世界の製薬大手4社中3社が減益など」に書いたように、「新薬を次々と開発することで儲ける」という大手製薬メーカーのビジネスモデルは、行き詰っているように思います。
製薬会社に就職を希望する学生は、このような情況を良く理解しておく必要があります。抗生物質の登場でヒトの平均寿命が飛躍的に延びた時代は遠い昔です。ジェネリック医薬品が90%以上を占めるような業界で生き残る戦略が必要です。世界のトップ企業が盛んにM&Aを行っているのは、おそらくそのためと思います。
日本の製薬企業の将来について予測してみました。幸運にも世界のトップ企業になった場合は、医薬品中心の総合商社、そうでない場合は、世界トップ企業の日本代理店か、ベンチャー企業か、あるいはジェネリック中心か、のどれかを選択せざるをえないと考えています。
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