【厚労省】ACE素外剤・ARB投与の糖尿病患者、ラジレス禁忌に設定
以下は、記事の抜粋です。
厚労省はノバルティスの高血圧症治療「ラジレス」(一般名:アリスキレンフマル酸塩)について、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を投与中の糖尿病患者を「禁忌」とする添付文書の改訂を通知した。
腎機能障害を伴う2型糖尿病患者を対象とした国際共同臨床試験「ALTITUDE」の中間解析で、有害事象の発現頻度が高まる結果が出たことを受けたもので、欧州では2月に同様の措置が講じている。
ただし、ACE阻害剤やARBを含む他の降圧治療で血圧コントロールが著しく不良な患者は禁忌から除く。また、腎機能障害のある患者への投与に対する注意も「重要な基本的注意」に追記する。
ALTITUDE試験は、心血管及び腎イベントの発症リスクの高い腎機能障害を伴った2型糖尿病患者さんを対象として実施された臨床試験です。アリスキレン(ラジレス®)をACE阻害薬またはARBへ上乗せ投与した結果、有害事象の発現頻度が高くなりました。
具体的には、高リスク患者に対する標準治療にアリスキレンを上乗せ投与した群では、投与開始後18-24カ月から非致死性脳卒中、腎合併症、高カリウム血症、及び低血圧の発現頻度が増えました。これらの結果を受けて、モニター委員会は、ACE阻害薬、ARBにアリスキレン上乗せ治療のベネフィットなしと判定し、昨年12月にALTITUDE試験は中止されました。
レニンは下図のように、アンギオテンシノーゲンからアンギオテンシンIを作る酵素です。レニンを阻害すると、アンジオテンシンⅠ以 降のすべてのアンジオテンシンペプチドの産生を抑制するため、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系全体を抑制することが期待できます。そのため、レニン阻害薬であるアリスキレンは理想的な薬物のように思えますが、実際にはいろいろな問題があります。
アリスキレン最大の問題は、そのバイオアベイラビリティー(生物学的利用率)の低さです。いろいろな数値が報告されていますが、どれも3%以下です。つまり、飲んだ薬の3%以下しか体内に吸収されません。これを30時間を越える半減期で補っているようです。このため、個体間及び個体内変動が大きくなり、種々の要因により臨床用量で推定される血中濃度を上回る可能性があります。
このように、アリスキレンはかなり使いにくい薬物です。もしも使う場合は、血清カリウム値とクレアチニン値に気をつけましょう。
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