アルツハイマー病治療薬「T-817MA」、第II相臨床試験で病状進行を大幅抑制‐第Ⅲ相試験に期待

【富士フイルム】AD治療薬「T-817MA」、第II相で病状進行を大幅抑制‐21年上市を目指す
以下は、記事の抜粋です。


富士フイルムは、子会社の富山化学が創製したアルツハイマー型認知症(AD)治療薬「T-817MA」の米国第II相試験について、主要評価項目で患者全体での有効性の検証には至っていないとしながらも、特定の患者群で認知機能低下の進行抑制、リン酸化タウの減少、海馬の萎縮抑制で統計学的有意差を示したと発表した。

富士フイルムによると、「今回の統計学的有意差は低分子のAD治療薬では世界初」としている。2018年度に日本を含めた国際共同第III相試験の開始を予定しており、21年度の上市を目指す。

同試験は、ドネペジル塩酸塩やリバスチグミン経皮システムで治療している軽度・中等度のAD患者を対象とした米国第II相プラセボ対照二重盲検比較試験で、有効解析の対象となった患者は369人。同剤448mg(高用量)投与群117人、224mg(低用量)投与群115人、プラセボ投与群137人に振り分け、52週間投与後の有効性・安全性を評価した。主要評価項目として、認知機能の評価項目であるADAS-cogや全般的臨床症状改善度の評価項目であるADCS-CGICを検討した。


詳細は、富士フィルムが7月19日に発表したニュースリリース、「T-817MA」の米国第II相臨床試験とミクログリア細胞に対する実験についてをご覧下さい。

要約としては、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症(以下AD)患者を対象としたAD治療薬「T-817MA」の米国第II相臨床試験において、下記の臨床効果を統計学的有意差をもって確認したとしています。

●罹病期間が短い患者群(患者全体の中央値2.6年以内)での認知機能低下の進行を大幅に抑制
●脳脊髄液評価対象患者において、リン酸化タウ(以下p-Tau)の減少
●Volumetric MRI(*1)評価対象患者全体において、海馬(*2)の萎縮抑制の傾向

T-817MAは、シグマ受容体(細胞内の小胞体膜上に存在するタンパク質で、神経細胞障害の軽減等の機能があるらしい)を活性化して神経細胞保護効果や神経突起伸展促進効果を示すことが知られています。かなり期待して良さそうです。

しかし、第Ⅱ相まで行って、第Ⅲ相でダメだった薬は非常に多いです。例えば、BACEIの阻害抗体であるベルベセスタットは、ベータアミロイドを減らしてアルツハイマー病の治療に使われることが期待され、昨年(2016年)11月2日に、有害な副作用が認められず、薬剤として期待が持てるとする論文がScience Translational Medicine誌に発表されましたが(記事をみる、論文をみる)、今年になって有効性が認められないとして第Ⅲ相試験が中止になりました。

現在アルツハイマー病の症状を軽減する薬はあっても、原因から治療する薬はありません。T-817MAの第Ⅲ相試験での成功を心から祈ります。

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