ヒアリの毒とはどんなものか?

以下のニュースのように、「強毒の」ヒアリが神戸と尼崎でみつかり、周辺の皆様は不安に感じておられるかもしれません。ということで、ヒアリの毒について調べてみました。

強毒「ヒアリ」100匹発見、アスファルトのはがれた亀裂部分に 神戸市

以下は、記事の図と抜粋です。


環境省は6月18日、強い毒を持つ外来種のアリ、「ヒアリ」が神戸市のポートアイランドのコンテナヤードで見つかったと発表した。約100匹がアスファルトのはがれた亀裂部分にいたという。5月26日に尼崎市で、中国からの貨物船で運ばれたコンテナ内部で見つかったヒアリとの関連を調べている。

ヒアリは赤茶色で体長2.5~6ミリ。人が刺されるとやけどのような激痛が走る。毒針で何度も刺すほど攻撃性が高く、かゆみや動悸などが引き起こされ、アナフィラキシーショックによる死亡例もあるという。


上の図だけをみると、毒針で何度も刺されると誰でも死亡する可能性があるように考える人がいるかもしれませんが、それは誤りです。外国などでヒアリに刺されたことがある人を除けば、アナフィラキシーショックで死ぬ可能性のあるのは蜂毒アレルギーのある人だけです。

写真のように蜂とアリはよく似ています。分類上はどちらも膜翅目という目に属しています。毒もよく似ていて3~4種類の主要なタンパク質を含んでいます。そのタンパク質はホスホリパーゼ、ヒアルウロニダーゼ、酸性ホスファターゼなどの酵素です。これらの酵素は100~400アミノ酸を含む分子量1~5万の糖タンパク質で、膜翅目の生物はこれらの酵素を共有しているそうです(サイトをみる)。過去に蜂やアリに刺され、これらのタンパク質に対する抗体を持っているヒトだけが、刺された時にアナフィラキシーショックになる可能性があります。

別のニュースによると、北米では現在でも毎年8万人ほどがヒアリに刺され、100人が死亡してると報告されています。一方、日本では蜂刺されによるアナフィラキシーショックで年間20人ほどが死亡しています(サイトをみる)。ということで「強毒」といっても、蜂の毒とそれほど変わりません。また、蜂毒アレルギーの患者さんの約50%は蜂刺されのリスクが高い林野事業関係者、電気設備業者、ゴルフ場、養蜂業、農業などの職業の方です。少なくともアナフィラキシーショックによる死亡に関しては、蜂毒アレルギーを持たない都会の主婦は不安になる必要はないと思います。

たとえ、アナフィラキシーショックに陥ったとしても、医療設備の整った病院にすぐに運んで適切な治療をすれば、回復するはずです。メディアのセンセーショナリズムに惑わされないように気を付けてください。

ヒアリの鑑別方法です。 

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