イスラム教では豚を食べることが禁じられています。その理由について書かれた記事がありました(記事をみる)。タブーの理由だけでなく、ブタと他の食用動物との違いなど、とても興味深い内容でした。以下に要点をまとめます。
●インターネット上では「豚は寄生虫(繊毛虫)がいるので食べてはならないと定められた」という言説が見られる。
●ブタは餌に含まれるエネルギーの35%を肉に変えることができる。一方羊は13%、牛に至ってはわずか6.5%である。
●雌牛は一頭の仔牛を産むのに9ヶ月の妊娠期間が必要であり、また仔牛は180kgに達するのに4ヶ月かかる、合計13ヶ月かかる。一方雌豚は受胎後4ヶ月で8匹以上の子豚を産め、その後6ヶ月間で180kgを超える─つまり10ヶ月間で達することが可能である。
●コーランでの記載「次のものについては神がお前たちに禁じた。すなわち、豚の死体、血、肉。(コーラン2・168)」
●「律法が豚肉を禁じている第一の理由は、その習性と食べるものがきたなく不潔であるという豚の生態にある」という説明も過去にあった。
●1859年、寄生虫の繊毛虫と生の豚肉の関係が実証され、タブーを「寄生虫」に結びつける考え方が現れ始めた。しかし、豚肉だけが特別に危険な食材ではない。生煮えの豚肉は危険というならば、それは牛や羊、ヤギにも毛刻しなければならない。
●牛、羊、ヤギは反芻することができる。つまり高セルロース質食物の餌─ワラ、干し草、木の葉─など人間が食べられないものを食べることができる。
●豚は雑食動物だが反芻動物ではない。小麦やトウモロコシ、じゃがいも、大豆その他人間が食べられる低セルロース質の食物で育て場合のみ、奇跡的な体重増加を示すのである。
●豚は中東の気候にあってない。牛、羊、ヤギは水なしで長期間の間生きられ、発汗作用によって余分な熱を放出することができた。一方、豚は汗腺を持たないので汗をかけない。豚は身体が大きくなるほど、熱に耐えられなくなる。
●中東で豚を飼うのは反芻動物を飼う以上にコストがかかる。
●豚は農耕に使えず(鋤が引けない)、その毛は繊維や布にむかず、乳用にも適さない。肉以外ほとんど役立たない。
以上のように、ヨーロッパなどでは容易なブタの飼育が中東では難しく、ブタを忌避する伝統(傾向)が有史以前に作られ、それが宗教的タブーにも取り入れられた、即ち、「ブタを食べるな」という宗教的タブーは新たに創られたのではなく、元から民族にあったタブーを取り入れたというのが、Marvin Harrisという文化人類学者が『食と文化の謎』という本に書いた説だそうです。
対立することが多いイスラム教徒とユダヤ教徒が、どちらもブタをタブーとしている理由として、灼熱の中東の気候環境で説明しているのが面白いと思いました。
かわいいマイクロブタ
コメント