PPI使用で認知症リスクが上昇?
以下は、記事の抜粋です。
プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用は高齢者で増えているが,同薬が認知機能低下に関係する可能性を示した報告。ドイツのBritta Haenisch氏らは,ベースライン時に認知症のない75歳以上の高齢PPI使用者7万人超の健康保険データを前向きに追跡し,対照集団のデータと比較した。その結果,PPI使用群では,非使用群に比べて認知症発症リスクが1.4倍有意に高かったと報告した。
7万3,679人のうち,PPI定期使用は2,950人(女性77.9%,平均年齢83.8歳)で,非使用者は7万729人(女性73.6%,平均年齢83.0歳)であった。追跡期間中に認知症を発症したのは,全体で2万9,510人で,PPI定期使用群の認知症発症リスクは,非使用群と比べ有意に高かった(ハザード比1.44,P<0.001)。
遺伝学的背景(例えばApoE4アリル)などの交絡因子は考慮されていませんが、年齢、性差、合併症、ポリファーマシーなどは考慮されています。対象の大きさと時間軸の長さを考えると、かなり信頼できるデータだと思います。
ランソプラゾールやオメプラゾールなどのPPIは、血液脳関門を越えて、アルツハイマー病の原因になるAβタンパク質の分解を阻害する可能性などが、認知症をひきおこすメカニズムとして考えられています。ただ、この論文では、アルツハイマー型と脳血管型などを分けずに、すべての認知症を一まとめにして数えています。
いずれにしても、この論文は、”Thus, the avoidance of PPI medication may contribute to the prevention of dementia.”と結論しています。逆流性食道炎などでPPIを投与されている高齢者は多いので、かなり気になる論文です。
コメント
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PPI長期使用となると低用量アスピリンを使う人、すなわち脳血管障害の危険が高い人も含まれるのでPPI長期使用と認知症発症に正の相関があるのは当たり前、と思って論文を読んでみたら、うつ、糖尿病、卒中、虚血性心疾患、多剤併用などの交絡因子を除外する前のハザード比が1.44, 除外後のハザード比が1.66で驚きました。PPIは骨折の危険が添付文書に記載されていることもあり高齢者には使いにくい薬と思っていましたが、ますます使いにくくなりそうです。