フラミンガム心臓研究における 30 年間での認知症発症率
以下は、論文要約の抜粋です。
背景:認知症の有病率は,平均余命が延長するにつれて上昇すると予測されている.しかし,最近の推計では,高所得国では認知症の年齢別発症率が低下していることが示唆されている.フラミンガム心臓研究参加者における,認知症発症率の 30 年間の経時的傾向を報告する.
方法:1975年以降,フラミンガム心臓研究参加者に,認知症発症に関するサーベイランスを行った.60歳以上の5,205人を解析対象とし,4つの年代区分それぞれにおける認知症の 5 年発症率を明らかにした.また,年代と,年齢,性別,アポリポ蛋白 Eε4状態,教育レベルとの相互作用も探索した.
結果:年齢と性別で補正後の認知症の5年累積ハザード率は,第1期(1970年代後半~1980年代前半)では100人あたり3.6,第2期(1980年代後半~1990年代前半)では100人あたり 2.8,第3期(1990年代後半~2000年代前半)では100人あたり 2.2,第4期(2000年代後半~2010年代前半)では 100人あたり 2.0であった.
第1期の発症率と比較して,第2期は22%,第3期は38%,第4期は44%低下した.このリスク低下は,学歴が高校卒業以上の参加者に限って認められた.大部分の血管危険因子(肥満と糖尿病を除く)の有病率と,脳卒中,心房細動,心不全に関連する認知症のリスクは経時的に低下したが,これらの傾向のいずれによっても,認知症発症率の低下は完全には説明されない.
断っておきますが、認知症患者の数が減っているわけではありません。実際は、平均寿命が伸びているので、総罹患者数は、30年間に2倍近く増えているものと思われます。
上の論文の結果を簡単にまとめると、同じ年代での認知症になる割合が減ったということ、例えば60代で認知症になるヒトが30年間で半分近くに減ったということです。
興味深いのは、遺伝的に認知症リスクが高いとされる人の発症率は変化していないこと、高校を卒業していない集団では発症率が減少していないこと、などです。
長生きが一番のリスクファクターなのは仕方ないですが、遺伝的に問題なければ、正しい健康知識を持って生活することが認知症予防には重要のようです。
コメント
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久山町研究では欧米とは逆に認知症発症確率が近年になるにつれ増えていると報告されているので不思議です。