腹囲が身長の約半分に達すると心血管疾患(CVD)発症リスクが上昇する。

日本人男性のCVDリスク、最適な予測指標はBMIではなかった
以下は、記事の抜粋です。


日本人男性の将来の心血管疾患(CVD)リスクの評価において、従来広く用いられてきたBMIよりも腹囲身長比(waist-to-height ratio)や体の丸み指数(body roundness index)のほうが有用で、欧米での報告と同様に日本人男性でも腹囲が身長の約半分に達するとCVD発症リスクが上昇することが、京都府立医科大学の市川 貴博氏らによって明らかになった。

肥満は世界的に重要な公衆衛生上の課題であり、とくに中心性肥満はさまざまな代謝疾患の発症に関連することが報告されている。日本では主にBMIを用いて肥満を判定しているが、BMIでは内臓脂肪の蓄積を正確に反映することができないという限界がある。そこで研究グループは、大規模な日本人集団のデータをもとに、5つの異なる体格指標が肥満の重大な合併症であるCVDの発症にどのように関連するのかを13年間にわたって比較・検証した。

対象は、2008~21年にパナソニック健康保険組合が実施した健康診断を受診した16万656人(男性11万9,510人、女性4万1,146人)であった。身体測定、血液検査、問診結果を縦断的に収集し、BMI、腹囲、体型指数(a body shape index)、体の丸み指数、腹囲身長比の5つの体格指標のCVD発症予測能を比較した。主要評価項目は、心血管死、非致死性冠動脈疾患、非致死性脳卒中の主要心血管イベント(MACE)の発症率であった。

主な結果は以下のとおり。

・参加者の平均年齢は44.5±8.3歳であった。13年間の追跡期間中、男性では4,027例(3.4%)、女性では372例(0.9%)がMACEを発症した。
・多変量解析の結果、男性では5つすべての体格指標がMACE発症と関連していた。
・女性では、いずれの体格指標もMACE発症と有意な関連は認められなかった。
・男性における各指標の予測精度を比較したところ、腹囲身長比と体の丸み指数のAUC値は他の3つの体格指標よりも高く、より高い予測能を持つことが明らかになった。
・CVD発症の予測のための最適なカットオフ値は、腹囲身長比が0.494、体の丸み指数が3.250であった。

これらの結果より、研究グループは「13年以上の追跡調査を受けた日本人男性において、体の丸み指数と腹囲身長比はBMI、腹囲、体型指数よりもCVD発症のより重要な予測因子であった。特定されたカットオフ値は、リスク層別化の改善とCVDリスク低減のための早期予防介入に役立つ可能性がある」とまとめた。


元論文のタイトルは、「心血管疾患発症を予測する人体計測指標:日本人集団における13年間の追跡調査」です(論文をみる)。

体の丸み指数(body roundness index)の計算式は、BRI = 364.2 – 365.5 × √{1 – (腹囲 / (2π))² / (0.5 × 身長)²} と非常に複雑です。この式は、身長、腹囲、そしてBMIのように体組成全体を楕円で近似し、そこから算出される離心率(体の丸みを示す指標)に基づいているそうですが、あまりにややこしいので、「腹囲が身長の約半分に達するとCVD発症リスクが上昇する」という簡単な結論になったのでしょう。

男性と女性それぞれの平均年齢が示されていないのではっきりとしませんが、パナソニックの社員を対象とした健診結果を基にしているので、女性群の年齢が男性に比べて低くそのために主要心血管イベントの発症リスクが低いために指標の影響が出ない可能性があると思います。

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