新型コロナのmRNAワクチンは腫瘍を免疫チェックポイント阻害剤に感受性化する

新型コロナのmRNAワクチンは「がんと戦う免疫システム」を活性化する可能性
以下は、記事の抜粋です。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対抗するために開発されたmRNAワクチンは、接種開始からわずか数年で250万人以上の命を救い、世界全体で1480万年もの生存年数の増加をもたらしたとされています。そんなCOVID-19のmRNAワクチンが、がんと戦う免疫システムを活性化する可能性があることが、科学誌のNatureに発表された論文で報告されました。

テキサス大学のアダム・グリッピン氏らの研究チームは、脳腫瘍患者のためのmRNAワクチンを開発している最中に、作成したmRNAワクチンががんとは関係ない場合でも、腫瘍を死滅させるための免疫系が訓練されることを発見しました。この結果を受けたグリッピン氏らは、「COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスを標的として設計されたmRNAワクチンにも、抗腫瘍効果があるのではないか」という仮説を立てたとのこと。

そこでグリッピン氏らは、免疫チェックポイント阻害薬による免疫療法を受けた進行期の悪性黒色腫および肺がん患者1000人以上の臨床転帰を調査しました。免疫チェックポイント阻害薬とは、がん腫瘍が免疫細胞を抑制する「免疫チェックポイント」という仕組みを阻害し、免疫系が引き続きがん細胞を攻撃できるようにする薬剤です。

データを分析した結果、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受け始めてから100日以内に、ファイザーまたはモデルナのmRNAベースのCOVID-19ワクチンを接種した患者は、どちらのワクチンも接種しなかった患者と比較して3年後生存率が2倍以上であることが判明しました。

驚くべきことに、COVID-19ワクチンの効果は通常は免疫療法に反応しない患者にもみられ、このグループでは3年後生存率が約5倍に改善されたとのことです。生存率の向上とmRNAベースのCOVID-19ワクチン接種との関連性は、がんの重症度や併存疾患といった要因を考慮しても依然として強固なものでした。

さらに研究チームは、mRNAベースのCOVID-19ワクチン接種が免疫チェックポイント阻害薬の効果に影響を及ぼすメカニズムを調べるため、マウスを用いて動物実験を行いました。実験では、COVID-19ワクチンが一種の警報として作用し、体内の免疫系を活性化させてがん腫瘍細胞を認識・死滅させ、免疫細胞を抑制しようとするがん細胞の能力を克服することが確認されました。

免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療は多くの患者に恩恵をもたらしましたが、腫瘍内部に浸潤した免疫細胞が少ない「Cold Tumor」を持つ患者には効果がみられない点が課題でした。ところが今回の研究では、mRNAワクチンがこれらの「Cold Tumor」を免疫チェックポイント阻害薬に反応する「Hot Tumor」に変える可能性が示唆されています。

mRNAベースのCOVID-19ワクチンはすでに開発されているだけでなく、世界中の広い地域で比較的安価に入手可能であるため、治療のハードルが非常に低いという利点があります。

グリッピン氏らの研究チームは、mRNAベースのCOVID-19ワクチンが免疫チェックポイント阻害薬の治療に役立つかどうかを調べるため、肺がん患者を対象とした全国規模の臨床試験を準備しているとのこと。


ワクチンを打ったらがんのリスクが減少するという話かと思ったら違いました。

免疫チェックポイント阻害薬は、体が本来持っている免疫力を回復させてがん細胞を攻撃させる、がん薬物療法の一種です。

がん細胞は、T細胞(免疫細胞の一種)の攻撃から逃れるために、免疫に「ブレーキ」をかける信号(免疫チェックポイント)を利用します。チェックポイント阻害薬は、この「ブレーキ機能」を解除することで、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにします。

PD-1/PD-L1経路: T細胞表面のPD-1分子と、がん細胞表面のPD-L1分子が結合すると、T細胞の攻撃にブレーキがかかります。この結合を阻害する薬(PD-1阻害薬やPD-L1阻害薬)があります。

CTLA-4経路: T細胞の活性化を抑制するCTLA-4分子の働きをブロックすることで、免疫反応を強化する薬(CTLA-4阻害薬)もあります。

いくつかの種類の薬剤が日本で承認されており、代表的な商品名・一般名は以下の通りです。
ニボルマブ(製品名:オプジーボ)
ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)
イピリムマブ(製品名:ヤーボイ)
アベルマブ(製品名:バベンチオ)

特徴としては、 効果が出た場合に、その効果が長く持続する可能性があるという特徴があります。肺がん、悪性黒色腫(メラノーマ)、腎細胞がん、頭頸部がんなど、複数のがん種で承認・使用されています。

一方、免疫システム全体に作用するため、過剰な免疫反応による免疫関連有害事象 (irAE) と呼ばれる特有の副作用が現れることがあります。主な副作用には、間質性肺炎、甲状腺機能障害や下垂体機能低下症や1型糖尿病などの内分泌障害、大腸炎、皮膚炎、皮疹、かゆみ、肝炎などがあります。

副作用も増強されるのでしょうか?あるいは、コロナワクチンだけで自己免疫疾患のリスクが増える可能性はないのでしょうか?

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