適量のアルコール摂取でもアミロイドβは蓄積する?
以下は、記事の抜粋です。
WHOによると、人間の健康に対する安全なアルコール摂取量は存在しないとされている。しかし、アルコール摂取とアルツハイマー病の病態との関連は、依然としてよくわかっていない。
Archontoula Drouka氏らは、アルコール摂取の頻度やパターンが神経変性バイオマーカーの予測と関連するかを明らかにするため、非認知症の中年成人コホートによる検討を行った。
対象は、非認知症者195人。アルコール摂取頻度のサブグループ(非飲酒者、時々飲酒者、軽度〜中等度の飲酒者)、地中海食型アルコール食生活パターン順守のサブグループにおける脳脊髄液(CFS)中のアルツハイマー病バイオマーカー(タウ[Tau]、リン酸化タウ[P Tau]、アミロイドβ[Aβ])を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を実施した。分析では、非飲酒者を基準カテゴリーとして使用した。
主な結果は以下のとおり。
・対象者は、66%が女性、平均年齢65±9.4歳、教育歴13.8±3.6年であった。
・ロジスティック回帰分析では、軽度〜中等度の飲酒者(51人)は、非飲酒者(117人)と比較し、Aβ陽性率が高いことが明らかとなった(オッズ比:2.98)。
・地中海食型アルコール食生活パターン順守率の高い人は、非飲酒者と比較し、Aβ、Tau/Aβ42比、P Tau/Aβ42比の陽性率の有意な高さと関連が認められた。
元論文のタイトルは、「適度なアルコール摂取とアルツハイマー病の脳脊髄液バイオマーカーとの関連:ALBION研究のデータより」です(論文をみる)。
オッズ比が2.98ということは、軽度〜中等度の飲酒者は非飲酒者よりもアルツハイマー病の原因と考えられているAβの陽性率が約3倍だったということです。
Aβ、Tau/Aβ42比、P Tau/Aβ42比は、アルツハイマー病の診断や病態の理解に役立つバイオマーカーです。Aβは脳内に蓄積するタンパク質で、特にAβ42は強い凝集作用を持ち、アルツハイマー病の病態を促進すると考えられています。Tau/Aβ42比やP Tau/Aβ42比は、脳脊髄液や血液中のタウタンパク質とAβ42の量を測定し、その比率を評価することで、アルツハイマー病の進行度や病型を推定するのに役立つとされています。
おもしろいのは、食事と一緒にワインを飲む地中海食型食生活は、健康に良い影響を与えると考えられているのに、上記のアルツハイマー病バイオマーカーが高いことです。やはり、ワインも含めてアルコールは「百薬の長」ではないようです。
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