「血圧下げすぎ」を煽る週刊現代の記事について

失神して転倒、そのまま寝たきりに…「血圧下げすぎ」が引き起こすヤバすぎるリスク…むしろ心血管系リスクが増大?
批判記事なので、太字も含めてほぼそのままを転載します。


日本に根強い「高血圧恐怖症」
昨年12月、岡山大学などの研究グループが衝撃的な論文を発表した。岡山市内に住む65歳以上の高齢者約5万5000人を対象に、血圧と死亡リスクの関連性を調べたところ、85歳以上は高血圧であってもリスクが上昇しないとわかったのだ。

こういった研究成果が発表されても、日本ではいまだに高血圧への恐怖が根強い。患者の血圧が「140/90mmHg」で基準より少し高いとわかれば、たとえ体調に問題はなかったとしても、「念のため」と言って降圧剤を処方する医師は少なくないだろう。しかし最先端の医学研究の現場では、高血圧と同じくらい、血圧を下げすぎてしまう危険性が懸念されている。

事実、欧州心臓病学会と欧州高血圧学会が共同で作成している高血圧治療のガイドラインによれば、血圧が120/70を下回ると、かえって心血管系疾患のリスクが増大するという。もはや過降圧は、高血圧に負けず劣らずハイリスクだと言える。

「起立性低血圧」という恐怖
血圧を下げすぎると、いったい何が起こるのか。愛知医学大学特任教授の宮田靖志氏が危険を指摘するのは、めまいだ。

「高齢の方の場合、立ち上がった瞬間に血圧が低下してしまう起立性低血圧が多く見られます。よくあるのが、夜中にトイレに行こうとして立ち上がり、めまいに襲われてふらつくケース。夜に転倒して骨折し、整形外科を受診した患者に詳細を聞くと、実は起立性低血圧が原因だったということが少なくありません」

自宅の中とはいえ、ふらついたり立ちくらみしたりして転倒すれば、打ちどころが悪いと死につながりかねない。運よく骨折で済んだとしても、下半身の骨を折ってそのままベッドに寝たきりになれば、認知症のリスクは格段に上昇するだろう。

たとえ無事にトイレを済ませたとしても、決して安心はできない。人間は尿意をもよおすと、膀胱内の圧力が上がり、それにともなって血圧も少し上がる。

しかし用を足し終わると、膀胱内の圧力と血圧がともに急激に低下するため、トイレから出た後に意識を失って倒れる「排尿失神」が起こりかねない。降圧剤で夜間の血圧を下げすぎていると、その分だけ排尿した後に失神するリスクも増大するわけだ。


岡山大学の発表には以下のように書かれています(論文をみる)。太字はブログ著者です。


岡山市の基本健康診査データを用いて、65歳以上の高齢者における血圧と総死亡および心血管死亡との関連を検討しました。総死亡および心血管死亡ともに血圧の上昇と共にリスクは高まりました。一方、85歳以上では低血圧が総死亡リスクを増加させることが示されました。結論として、65〜84歳では高血圧によるリスクが高く、85歳以上では高血圧よりも、むしろ低血圧によるリスクが高まることが示唆されました。


記事では低血圧のリスクを強調するためかわかりませんが、65~84歳の結果を記載していません。また、欧州高血圧学会(ESH)2023年版ESH高血圧ガイドラインには以下のように書かれています。上の記事は下線部(ブログ著者による)のみを強調しています。


(1)治療開始血圧
18歳から79歳までは「140/90mmHg以上」、80歳以上は「160/90mmHg以上」まで上昇した時点で薬剤治療開始が推奨され、心疾患(CV)高リスク例に限り「130/85mmHg以上」での薬剤治療開始が「考慮可」である(いずれも「診察室血圧」)。

ただし今回のガイドラインでは微調整が加わった。第一は「フレイル」例についての記述が新たに加わり、薬剤治療開始血圧考慮に「個別化が必要」と明記された。

また原則、収縮期血圧(SBP)「≧160mmHg」で降圧薬治療を考慮する「80歳以上」患者でも、身体的に若ければSBP「140-159mmHg」での薬剤治療開始が「考慮可」とされた。

(2)降圧目標
降圧目標では2018年版で姿を消した「80歳以上」の個別降圧目標が復活した。原則として150/80mmHg未満、忍容できればSBP「130-139mmHg」である。ただし拡張期血圧(DBP)は70mmHgを下回らぬよう注意する。

また2018年版では冠動脈疾患例に対してのみ回避が推奨されていた「120/70mmHg」を下回る降圧が、今回ガイドラインでは全例で避けるよう推奨されている。

一方、「18~79歳」の降圧目標は2018年版ガイドラインと同様、「<140/90mmHg」が原則で、治療に忍容できればさらに「<130/80mmHg」を目指すとのスタンスが維持された(糖尿病合併では特に「<130/80mmHg」を強く推奨)。


こんな記事を読んで80歳以下の患者が降圧薬を拒否した結果、大動脈瘤乖離などで死んでも、講談社は責任を取ってくれないと思います。

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