アトピー性皮膚炎マウスの皮膚症状は黄色ブドウ球菌などの偏った異常細菌巣によりひきおこされる

黄色ブドウ球菌対策が有効か=アトピー性皮膚炎―慶大など
以下は、記事の抜粋です。


アトピー性皮膚炎様の症状を示すマウスを遺伝子操作で作ったところ、皮膚に生息するさまざまな細菌群の中で黄色ブドウ球菌が異常に増えて発症に至ったと、慶応大と米国NIHの研究チームが4月21日付のImmunity誌に発表した。

アトピー性皮膚炎の患者では、症状がひどくなると皮膚の細菌群の半分以上が黄色ブドウ球菌で占められる例が知られる。今回のマウス実験の結果から、皮膚の細菌群を正常化することが新治療法になる可能性が示された。

慶応大医学部の永尾圭介元専任講師らが、皮膚の細胞の分化や機能を調節する酵素「ADAM17」ができないマウスを生み出したところ、乾燥肌やアトピー性皮膚炎のような症状を示した。離乳直後から抗生物質を投与し続けると皮膚の細菌群が正常な状態を保ち、皮膚炎の発症を抑えられたが、10週目で投与をやめると黄色ブドウ球菌が増えて発症した。


元論文のタイトルは、”Dysbiosis and Staphyloccus aureus Colonization Drives Inflammation in Atopic Dermatitis”です(論文をみる)。プレスリリースはこちら

ヒトのアトピー性皮膚炎の原因遺伝子あるいは、発症に強くかかわる遺伝子は未だ同定されていません(記事をみる)。不明の原因により、上皮バリアの破壊やIgEの制御異常などが生じ、その結果、アレルゲンに感作されたり、ウイルス・細菌・真菌などの感染を受けやすくなると考えられています。

ADAM17は、824アミノ酸からなる膜タンパク質で、ヒトの成人では心臓や骨格筋で多く発現しているそうです。ADAM17は、TGFα、Notch、TNFα、EGFRリガンドなど様々な膜タンパク質を膜近傍で切断し、活性化することが知られています。EGFRのコンディショナルノックアウト(cKO)がADAM17のcKOマウスと同様の皮膚症状をおこすそうですので、ADAM17がEGFRリガンドをプロセスするところの阻害が、上皮バリアの破壊を引き起こしたのだと思います。

しかし、黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎の症状を増悪させることは既に知られており、抗菌薬が皮膚症状を改善することも既に知られていました(記事をみる)。残念ながら、現在のところアトピー性皮膚炎の治療に役立つ情報ではなさそうです。

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