SGLT2阻害薬は腎機能が高度に低下した糖尿病患者の予後も改善し得る

SGLT2iはステージ5のDKDの予後も改善し得る
以下は、記事の抜粋です。


腎機能が高度に低下した糖尿病患者であっても、SGLT2阻害薬(SGLT2i)によって予後が改善することを示すデータが報告された。Dr. Yen’sクリニック(台湾)のFu-Shun Yen氏らの研究によるもの。SGLT2iの処方が、透析導入や心不全、急性心筋梗塞、糖尿病性ケトアシドーシス、急性腎障害による入院リスクの有意な低下と関連しているという。

SGLT2iは血糖降下作用とともに腎保護作用や心保護作用を有することが明らかになっており、ガイドラインでも使用が推奨されている。しかし、そのエビデンスは腎機能が一定程度以上に保たれている患者を対象に行われた研究から得られたものであり、高度腎機能低下例でのエビデンスは数少ない。これを背景としてYen氏らは、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて、ステージ5(eGFR20mL/分/1.73m2未満で定義)の慢性腎臓病(CKD)を有する糖尿病患者でのSGLT2iの有用性を検討した。なお、同国は1995年に皆保険制度が施行され、国民の99%が国民健康保険に加入しており、NHIRDにはその医療行為が記録されている

解析には、SGLT2iが同国で使用され始めた2016年5月以降、2021年10月までのデータを用いた。この間に2型糖尿病かつステージ5のCKDを有する糖尿病関連腎臓病(DKD)患者のうち、2万3,854人にSGLT2iが処方されていた。SGLT2iが処方されていないDKD患者2万3,892人を無作為に抽出し、透析導入、心血管イベント、全死亡などのアウトカムを、SGLT2i処方の有無で比較した。解析対象者全体の平均年齢は61.0歳で女性が49.8%、HbA1c8.2%、eGFR10.3mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)82mg/gCrだった。追跡期間は平均3.1±1.5年、最長5.4年。

SGLT2iが処方されていた患者群では1,000人年当たりの透析導入のハザード比(HR)が0.34(95%信頼区間0.27~0.43)で、66%低リスクだった。

また、以下のイベントによる入院についても、SGLT2iが処方されていた群で有意なリスク低下が観察された。心不全はHR0.80、急性心筋梗塞はHR0.61、糖尿病性ケトアシドーシスはHR0.78、急性腎障害はHR0.80。一方、全死亡に関してはHR1.11で、SGLT2i使用の有無による有意差がなかった。

研究者らは、今回の研究は2型糖尿病患者のみを対象としたため、「この知見は2型糖尿病のないCKD患者には当てはまらない可能性がある」としている。


元論文のタイトルは、”Sodium–Glucose Cotransporter-2 Inhibitors and the Risk for Dialysis and Cardiovascular Disease in Patients With Stage 5 Chronic Kidney Disease(ステージ5の慢性腎臓病患者におけるナトリウム-グルコース共輸送体-2阻害薬と透析および心血管疾患のリスク)”です(論文をみる)。

国民皆保険制度の是非や台湾を国と呼ぶかどうかは置いておいて、国民皆保険制度は小さな国の方が導入しやすいのかもしれません。全死亡がなぜ改善しないのか不思議ですが、この報告は、慢性腎臓病を有する糖尿病患者にとっての希望の星だと思います。

日本でSGLT2阻害薬が最初に発売されたのは2014年4月17日で、現在は6成分7製剤が使われています。日本でもSGLT2阻害薬の使用によって透析を受ける糖尿病患者さんが減っていると嬉しいです。

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