ルキソリチニブ(ジャカビ®):骨髄線維症に適応を持つJAK阻害薬
以下は、記事の抜粋です。
2014年7月4日、抗悪性腫瘍薬ルキソリチニブリン酸塩(商品名ジャカビ錠5mg)の製造販売が承認された。適応は「骨髄線維症」。1回5~25mgの範囲で、1日2回、12時間ごとを目安に経口投与する。
骨髄線維症(MF)は、骨髄が線維化することで、正常な血液産生が妨げられる進行性の血液がんである。国内での発症率は10万人あたり約0.2人で、現在の有病者数は約1500人と推定されている。脾腫、脾腫に伴う腹部の不快感や痛み、倦怠感・寝汗・体重減少・痒みといった消耗性の全身症状、貧血に伴う倦怠感・疲労感など、様々な症状が認められる。一般的に予後は不良。国内の5年生存率は38%、生存期間の中央値は3.4年と推定されている。
現時点での治療としては、主な合併症に対する対処療法が行われているが、効果は限定的。造血幹細胞移植によって治癒する可能性があるものの、高齢の患者が多いことから移植の対象となる患者は限られている。
MF患者ではTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカイン産生量が上昇しており、これらが消耗性全身症状を引き起こしていると考えられている。これらのことから、MFの発症にはJAK経路の恒常的な活性化が大きな役割を果たしていると推測されている。
ルキソリチニブは、JAK経路を阻害することで脾腫を縮小したり、サイトカインの産生を抑制し、MF患者のQOL低下の防止を図れるものと期待されている。JAK阻害薬としては、関節リウマチ治療薬としてトファシチニブ(商品名ゼルヤンツ)が2013年7月より臨床使用されている。
ルキソリチニブは、海外での2つの第3相臨床試験(COMFORT-1、COMFORT-2試験)で有効性及び安全性が確認されている。2011年11月に米国で承認されて以来、2014年2月現在、MFの治療薬として世界59か国で承認されている。
ルキソリチニブ(ruxolitinib、ジャカビ®)は記事にあるように、トファシチニブ(tofacitinib、ゼルヤンツ®)に続いて承認されたJAK阻害薬です。しかし、適応疾患は異なり、トファシチニブは関節リウマチでルキソリチニブは骨髄線維症です。
JAK阻害薬についての最新の総説によると、ルキソリチニブはJAK1とJAK2を阻害し、トファシチニブはJAK3を阻害することになっています(総説をみる)。これらの特異性の違いが適応疾患の違いに反映していると思われます。
ルキソリチニブもトファシチニブもJAKのATP結合部位に作用する薬物です。同じようなJAKのATP結合阻害薬が、様々な疾患に対する適応をめざして続々と開発中だそうです。おそらく、JAK1/2/3のそれぞれに対する特異性がより高いものや、逆によりdirtyなものが出てくるのでしょう。JAKのリン酸化酵素活性をアロステリックに阻害する薬物も期待できそうで、今後のJAK阻害薬業界の展開は非常に楽しみです。
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