「お酒で脳が萎縮する」のではなく「脳が小さいとお酒を飲む」という可能性が示される
以下は、記事の抜粋です。
お酒を飲むことと脳の萎縮との間に関係があることは、過去の研究でたびたび示されてきました。しかし、新たな研究では、「お酒を飲むから脳が萎縮する」のではなく、「脳のある部位が小さいからお酒を飲むようになる」という、これまでとは逆の因果関係が示唆されています。
ワシントン大学のデイビッド・バランジャー氏らは、背外側前頭前野と島皮質という脳の2つの部位の灰白質の量がアルコール消費と関連していることを突き止めました。これらの部位は、感情・記憶・報酬・認知コントロール・意思決定に関わっています。お酒を飲まなかった子どもの頃から飲酒を行う大人になるまでの脳スキャン画像を分析した結果、これらの部位に遺伝子に関連した灰白質の減少があることは、将来的なアルコール消費、具体的にいうと若い頃に飲酒を始めることなどの予測因子になったとのこと。
また、異なる飲酒癖を持つ双子の脳スキャン画像を比較したところ、お酒をあまり飲まない双子に比べて、お酒をよく飲む双子は灰白質の量が少ないことが示されました。興味深い点は、双子のうち1人が大酒飲みだったとしても、2人ともの灰白質の量が少ないことが示されたこと。このことから、灰白質の少なさがアルコール消費の結果ではなく、アルコール消費に関連する脆弱性であると研究者は考えています。
加えて、人間の脳における遺伝子発現のデータを調査したところ、アルコール消費の遺伝リスクは、脳のほかの部位よりも背外側前頭前野の遺伝子発現と関連していたことがわかりました。これらから、研究者は前頭前皮質の灰白質が少なさはアルコール消費の遺伝リスクによってもたらされる可能性があると結論付けています。
元論文のタイトルは、”Convergent evidence for predispositional effects of brain gray matter volume on alcohol consumption”です(論文をみる)。
特定部位における遺伝的な灰白質の少なさが若年期からのアルコール消費を促進し、これが特定部位あるいはそれ以外の部位の脳の萎縮を加速させて悪循環に陥るというストーリーです。お酒好きの友達にこの論文を教えてあげましょう。
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