驚異の記憶力を持つ鳥、マミジロコガラは無数の食料の隠し場所をすべて覚えている
以下は、記事の抜粋です。
北米西部の山々で暮らしているシジュウカラ科の鳥、「マミジロコガラ(Mountain Chickadee)」は、あちこちに隠した保存食のありかをずっと忘れないという。雑食性で、イモムシや昆虫のほか、針葉樹などのタネも食べる。
面白いのは、マミジロコガラにはそうした食べ物を隠して保管する習性があるところだ。木の皮、枯葉の下、松ぼっくりの中など、山のあちこちに食べ物を隠す。そして冬が来ると隠し場所を訪れて保存食を食べるのである。雪深く冬が厳しい地域でも生きていけるのは、どこに隠したのかをすべて覚えているバツグンの記憶力のおかげだ。
だがマミジロコガラの体はほんの12cm程度で、脳みそなど豆よりほんの少し大きい程度にすぎない。そんな頭で彼らはどうやって、無数にある隠し場所を覚えていられるのだろうか?
コロラド(元記事は誤り)大学ボルダー校とネバダ大学リノ校の研究チームは、そんなマミジロコガラの記憶力の源を探るために、シエラネバダ山脈で巧妙な実験を実施した。
8個で1組の餌箱セットを設置し、そこに彼らが大好物なタネを入れておく。各餌箱の入り口にはマミジロコガラに取り付けた発信機を検知するリーダーがついており、やってきた鳥が誰なのか区別する。餌箱の入り口はどの鳥でも開くわけではなく、特定の鳥がやってきたときだけ開くように設定されていた。
だからマミジロコガラたちは、自分に割り当てられた入り口をきちんと覚えなければ、大好物にありつくことができない。そのためには間違えながらも、繰り返し餌箱を訪れ、入り口が開く餌箱を探らねばならない。
研究チームは、発信機を取り付けた162羽のマミジロコガラを観察して、彼らが自分の割り当てを正しく把握するまで、間違えた餌箱にとまった回数をカウントした。この試行錯誤が少なかった個体ほど、空間記憶力が高いということになる。
その上でさらに、マミジロコガラから血液を採取し、それぞれの遺伝子を解析。この解析結果と記憶力テストの結果を比べて、マミジロコガラの記憶力の良さに関係する遺伝子を調べた。
そして明らかになったのが、97の遺伝子だ。その多くは脳内で学習と記憶を司る「海馬」に関連するもので、これらの遺伝子に変異を持つ個体ほど、自分に指定された餌箱を覚えるまでに間違える回数が少なかった。こうした結果は、マミジロコガラの記憶力がどのように進化してきたかを追跡する手がかりになる。
たとえば、マミジロコガラの共通祖先もまた餌を隠す習性があったと考えられている。ところが、今日見られる7種のコガラのうち、2種にそのような習性はない。その2種は、一年中エサが豊富な暖かい地域で暮らしており、そのために保存の習性が消えていったようだ。
そして今回空間記憶の基礎となる遺伝子領域が判明したおかげで、保存の習性が消える過程で彼らの遺伝子がどのように変化したのか確かめることができる。
こうした記憶力はあまりにも良すぎると、状況によっては生存に不利に働く可能性もあるという。今回の研究では、最初のテストを数日間行った後、餌箱の割り当てを変えてみた。すると記憶力が良かった個体ほど、新しい割り当てを覚えるのに苦労したのだ。
元論文のタイトルは、”Genes and gene networks underlying spatial cognition in food-caching chickadees(食物を隠して保存するマミジロコガラの空間認知の基礎となる遺伝子と遺伝子ネットワーク)”です(論文をみる)。以下はコロラド大学のサイトにある写真と動画です。動画をみると使われた餌箱セットがどんなものかよくわかります。
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