肥満症治療薬で肥満者の血圧が7.4~10.6低下

肥満症治療薬のチルゼパチドで肥満者の血圧が低下
以下は、記事の抜粋です。


肥満症治療薬のZepbound(ゼップバウンド、一般名チルゼパチド)の効果は、体重の減少や糖尿病コントロールの改善にとどまらないようだ。テキサス大学のJames de Lemos氏らによる研究で、チルゼパチドを使用した肥満患者では収縮期血圧(上の血圧)が有意に低下し、同薬が肥満者の血圧コントロールにも有効である可能性が示唆された。

この研究の背景情報によると、収縮期血圧は拡張期血圧(下の血圧)よりも心疾患に関連した死亡リスクとの関連の強いことが判明しているという。

チルゼパチドは、体内でインスリンの分泌を促し食後のインスリン感受性を高める作用を持つ2種類のホルモンと同じように働く。同薬には消化のスピードを緩やかにして食欲を低下させ、血糖値の調節を助ける作用がある。なお、日本では、現時点でのチルゼパチドの適応症は糖尿病のみである。

今回の研究では、肥満の成人600人(平均年齢45.5歳、平均BMI 37.4、女性66.8%)をプラセボ投与群(155人)、またはチルゼパチドを5mg(145人)、10mg(152人)、15mg(148人)のいずれかの用量で皮下注射する群にランダムに割り付けた。

その結果、チルゼパチド群ではプラセボ群に比べて試験開始時から36週間目までの間に収縮期血圧が、チルゼパチド5mg投与で平均7.4mmHg、10mg投与で平均10.6mmHg、15mg投与で平均8mmHg低下したことが明らかになった。

De Lemos氏は、「血圧降下がチルゼパチドによるものなのか、あるいは研究参加者の体重減少によるものなのかは不明だが、チルゼパチドを使用した参加者で認められた血圧の低下度は、多くの降圧薬の使用による低下度に匹敵するものであった」と説明している。


他大学の研究者が言っているように、肥満に関連した合併症の多くは相乗的に心血管疾患リスクを高める。したがって、肥満に関連した複数の合併症を抑える戦略は、心血管イベントのリスク低下につながる可能性があると思います。ただ、言われているように、薬剤を中止した場合に血圧がどのように変化するのかが問題です。

チルゼパチド(日本ではマンジャロという商品名で売られている)は、脂肪酸側鎖を含む39個のアミノ酸からなるペプチドで、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の2つの受容体に作用すると言われています。

GLP-1受容体作動薬は、血糖依存的なインスリン分泌促進、グルカゴン分泌抑制、さらには胃内容物排出抑制の作用により高血糖を改善させます。これらの作用は、同じインクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬より強く、血糖低下効果もより大きいと言われています。

チルゼパチドはこのクラスの薬剤では、GLP-1受容体だけでなくGIP受容体も標的とする点が独特で、どちらの受容体も活性化しインスリン分泌を増加させる。この受容体の追加により、体内でより広範囲の活性を得るとされています。

GIPとGLP-1はどちらも、食欲の調節で重要な人間の脳の領域に作用し、チルゼパチドは、食物摂取量を減らし、脂肪の利用を調節することが示されており、肥満症治療薬としての利用も期待されています。

GIPに対する作用がない既に市場に出ているGLP-1受容体刺激薬にも同じような血圧降下作用があるのかを知りたいと思います。

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