開発が中止されたアルツハイマー病治療薬(γセクレターゼ阻害剤)の作用について

先日、アルツハイマー病治療について、「挫折の向こうに成功はあるのか?」という興味深い講演を聴く機会がありました。Aβ42の脳脊髄液中レベルの低下が最初に認められる変化であること、Aβ42やリン酸化タウのPETができるようになったこと、Aβ42に対するワクチンはダメだったが抗体はある程度効果があること、などなどが話されました。クローズドの会だったので講師の先生のお名前は出せませんが、非常にわかり易く勉強になりました。

さらに、以前本ブログで紹介した話ですが、リリーが開発したγセクレターゼ阻害剤が、プラセボよりも認知機能と日常生活能力を有意に低下させたために開発が中止されたという話が紹介されました。演者の先生によるとリリーは、試験対象の患者の低下した認知機能が中止後どうなったか、などのデータを一切公開していないということでした。残念なことです。また、γセクレターゼ阻害剤は動物実験では良く効き、特異性にも問題はないとのことでした。

これらの結果や、γセクレターゼをノックアウトすると動物が死んでしまうことなどを総合すると、γセクレターゼはAβ以外にもヒトの認知機能に影響する未知の重要な分子に対して作用するのだろう、というご意見でした。

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