透析が時代遅れの治療法になる可能性!?

実験段階の薬が腎臓病治療に大きな前進をもたらす?…透析が時代遅れの治療法になる可能性も
以下は、記事の抜粋です。


実験段階にある腎臓病の治療薬「BI 690517」によって腎障害により悪化した尿中マーカーが有意に改善することが、ワシントン大学のKatherine Tuttle氏らが実施した同薬の第2相臨床試験で示された。慢性腎臓病(CKD)患者にBI 690517を投与したところ、主に肝臓で作られるタンパク質であるアルブミンの尿中濃度の低下が認められたという。尿中アルブミン濃度は長年にわたって腎臓病の進行度を評価するための指標として使用されている。Tuttle氏は、現行の診療を変え得る「かなりインパクトがある研究結果だとわれわれは考えている」と話す。

CKDは心臓病や糖尿病などのほかの慢性疾患に関係することも多い。また、CKDが進行して透析が必要となる人も多い。

Tuttle氏らの説明によると、体内ではアルドステロンと呼ばれるホルモンがナトリウムとカリウムの量を調節し、血圧を安定化させる役割を果たしている。しかし、アルドステロンが過剰に分泌されるとこのプロセスに異常が生じ、腎臓病の進行が加速する。

厄介なのは、腎臓病に対する標準的な薬剤であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)を長期投与すると、アルドステロンが増加する傾向がある点だ。Tuttle氏は、「アルドステロンが腎臓や心臓の炎症や線維化の大きな要因の一つであることは、数十年前から分かっている。だが、アルドステロンを治療の標的とすることは極めて難しかった」とワシントン大学のニュースリリースで説明している。

今回報告された臨床試験は、まず、ACE阻害薬またはARBを使用中で、推算糸球体濾過量(eGFR)が30~90mL/分/1.73m2未満、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が200~5,000mg/g未満、血清カリウム値が4.8mmol/L未満のCKD患者714人を、新しいクラスの糖尿病治療薬の一つであるエンパグリフロジン(商品名ジャディアンス)、またはプラセボを8週間投与する群にランダムに割り付けた。次いで、714人中586人(平均年齢63.8歳、男性67%)を、3カ月半にわたってBI 690517を1日当たり3mg、10mg、20mgのいずれかの用量で投与する群とプラセボを投与する群にランダムに割り付けた。

Tuttle氏らの説明によると、アルドステロンの産生量を抑制する作用を持つBI 690517のような薬剤は、高カリウム血症のリスクを高める可能性があるが、エンパグリフロジンはその作用に対抗することができるという。

その結果、BI 690517の10mgと20mgが投与された患者では臨床的に意義のあるUACRの低下(30%以上の低下)が認められた(10mg:−39%、20mg:−37%)。一方、BI 690517とエンパグリフロジンが投与された患者でも、同様に臨床的に意義のある尿中アルブミン濃度の低下が認められた。高カリウム血症の発生率は、プラセボ群と比べてBI 690517群で高かったが(プラセボ:6%、BI 690517 3mg:10%、10mg:15%、20mg:18%)、そのほとんどは軽度であった。

Tuttle氏は、注意深さを保ちつつも、「透析を必要とする患者の75%が糖尿病または高血圧性腎臓病に罹患している。認知度やアクセス、治療可能な段階での検出といった部分がうまくいけば、同薬によって透析が時代遅れの治療法になる可能性がある。そのような未来は、手の届くところまで来ている」との展望を示している。


非常に専門的な話題で恐縮ですが、「ACE阻害薬またはARBを使用中で、推算糸球体濾過量(eGFR)が30~90mL/分/1.73m2未満、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が200~5,000mg/g未満、血清カリウム値が4.8mmol/L未満のCKD患者」が身近にいるのでメモしておきます。透析が時代遅れの治療法になることを強く願います。

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