小児の急性中耳炎治療にアモキシシリン・クラブラン酸投与は有効である

Treatment of Acute Otitis Media in Children under 2 Years of Age

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:2歳未満の急性中耳炎に罹患した小児に対して、ただちに抗生物質による治療を行うべきか経過観察を行うべきかについては意見が分かれている。

方法:厳密な基準を用いて急性中耳炎と診断された生後6~23ヵ月の小児291例を、アモキシシリン・クラブラン酸を10日間投与する群とプラセボ群にランダムに割り付けた。症状における反応と臨床的失敗率を測定した。

結果:最初の症状が消失したのは、アモキシシリン・クラブラン酸群では2日目までに35%、4日目までに61%、7日目までに80%だった。プラセボ群ではそれぞれ28%、54%、74%だった。症状の持続的な解消は、アモキシシリン・クラブラン酸群では2日目までに20%、4日目までに41%、7日目までに67%だった。プラセボ群ではそれぞれ14%、36%、53%だった。臨床的失敗率もアモキシシリン・クラブラン酸群のほうがプラセボ群よりも低く、4~5日目以前で4%対23%、10~12日目以前で16%対51%だった。一方、アモキシシリン・クラブラン酸群で下痢とおむつ部の皮膚炎がより多く認められた。

結論:生後6~23ヵ月の急性中耳炎に罹患した小児に対する10日間のアモキシシリン・クラブラン酸による治療は、症状消失までの期間を短縮する傾向があり、全体的な症状を軽減するとともに耳鏡検査による急性感染症徴候の持続率も低下させた。


私は、この論文タイトルをみて驚きました。急性中耳炎に抗生物質は有効で、診断がつけばすぐに投与するものだと思い込んでいたからです。

しかし、1980年代辺りから西ヨーロッパでは、すぐに抗生物質を使うのではなく経過観察すべきだとの考えが強くなってきたそうです。この流れを受けて、アメリカ小児科学会などは2004年、経過観察を優先するガイドラインを作製しました。

実際にはエビデンスに基いたガイドラインではなかったようですが、このようなガイドラインができた背景としては、医療事情の改善により軽症の急性中耳炎で来院するケースが増えた、原因菌も昔と変化して軽症のものが増えた、多剤耐性菌に対する警戒などなど、があるようです。

上の論文は、NEJMの1月13日号に掲載されましたが、フィンランドで行われたほぼ同じデザインで同じ結果の論文、”A Placebo-Controlled Trial of Antimicrobial Treatment for Acute Otitis Media“も並んで掲載されています。近々ガイドラインの改訂があるのではないでしょうか?

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