以下は、論文要約の抜粋です。
背景:これまでに行われた短期間の臨床試験は、早期の2剤併用療法による血圧コントロールの改善を示唆している。早期の血圧コントロールにおいて、アリスキレンとアムロジピンの2剤併用がそれぞれの単剤投与に比べてより優れているかどうかと、早期の単剤治療がその後の併用療法に影響するかどうかを調べた。
方法:10カ国146施設の患者1254人を対象に、高血圧に対するアリスキレン+アムロジピン併用の有効性と安全性を無作為化並行群間試験で検討した。対象患者は18歳以上で、収縮期血圧が150-180mmHgだった。患者は無作為に、150mgアリスキレン+プラセボ、5mgアムロジピン+プラセボ、150mgアリスキレン+5mgアムロジピンの3群に1:1:2に振り分けられた。その後16-32週は、すべての患者が300mgアリスキレン+10mgアムロジピンの投与を受けた。主要エンドポイントは、8-24週における平均収縮期血圧と最終第24週における収縮期血圧の低下とした。
結果:早期2剤投与群は、早期単剤投与群に比べて平均収縮期血圧が6.5mmHg低かった。すべての患者が2剤併用投与を受けた第24週において、その差は1.4mmHgだった。副作用で試験から外れた患者は早期2剤併用群で14%、アリスキレン単剤群で14%、アムロジピン単剤群で18%だった。副作用としては、末梢浮腫、低血圧、起立性低血圧だった。
考察:アリスキレン+アムロジピン2剤併用による早期の血圧低下が推奨される。
高血圧患者に対して、1種類の降圧薬を投与しても目的の血圧コントロールが得られることは多くないです。しかし高血圧治療ガイドラインの多くは、早期からの2剤併用投与、つまり初めから複数種類の降圧薬を投与することには消極的です。
ところが本論文は、作用機序の異なる2剤を初めから併用する方が、より速い、より大きな、そしてより長期間続く良好な血圧コントロールが得られるということを主張しています。
このような初期の併用治療によって長期間の良好な血圧コントロールが得られる、という仮説を検証するために、本臨床試験では、早期治療は2剤と単剤で別々に治療し、その後一定期間はすべての被験者が比較的大量の2剤併用治療を受け、その後の血圧を比較するという設定になっています。
その結果、16週以降は同じ2剤投与を受けているにもかかわらず、血圧コントロールは早期2剤併用投与が単剤投与よりも優れていました。理由としては、投与された単剤薬物に対する生体の反応が、後に投与される他の薬物の効果を弱めるのではないか、と考えているようです。
副作用についても、早期2剤併用の方が単剤よりも少ないとしています。例えば、アムロジピンなどのCa拮抗薬でよく認められる下腿浮腫の頻度も、2剤併用で半減するそうです。
このような併用による効果は、アリスキレンとアムロジピンだけではなく、他の利尿薬、ARBなどの組み合わせでも同じだと思われます。
日本の高血圧治療ガイドラインでは、単剤から始めて、効果が不十分な場合には2剤併用、3剤併用へというのが標準的な薬物治療とされています。しかし、本論文の主張のように、早期から2剤併用することで、短期的なリスクの回避と長期的な良好な血圧コントロールの両方が期待できるのであれば、関連記事(1, 2)のように、使いやすい2-3種類の降圧薬が一緒になった合剤の選択肢も増えているので、ガイドラインの変更もあるかもしれません。
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コメント
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tak先生
こんばんは、お名前わかりませんのでそう呼ばせて下さい。
アメリカの臨床現場では利尿剤が安価で効果も新薬に優るようで第一選択薬の様子。
自分もアムロジピン、カンデルサルタン、アテノロールを併用してますが不安定。
日内変動、上が90~140で困ってます。
利尿剤を併用すると更に効果ありますが脂質代謝と尿酸値が上昇。
で、時々浮腫み取りに使用、体重みながらビクビクです。
浮腫みはca拮抗薬が原因と推測してます。
腎機能が正常値の半分くらいなのでラシックスを好んでます。
最近合剤が増えてますがこの辺の弊害はあまり語られてないようです。
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>taniyanさん
コメントありがとうございます。利尿薬が効果があるのでしたら、塩分制限が不十分なのだと思います。食事に気をつけてみてください。