パーキンソン病の発症抑える物質特定
以下は、記事の抜粋です。
遺伝性のパーキンソン病について、東京都医学総合研究所の松田憲之プロジェクトリーダーらの研究グループが発症を抑えるタンパク質を特定し、病気の早期発見につながる成果として期待されています。パーキンソン病は手足が震えたり、動作がぎこちなくなったりする難病で、根本的な治療法は見つかっていません。
研究グループでは、患者やマウスを対象に遺伝性のパーキンソン病に関係する物質を調べていくなかで、細胞内で「ユビキチン」というタンパク質がリン酸と結びつくことで病気の発症を抑えていることを特定しました。
研究グループによりますと、脳の神経細胞に異常が生じるとこのタンパク質が作られると考えられるということで、遺伝性ではないパーキンソン病でも同じ仕組みになっている可能性があるとしています。
松田氏は「ユビキチンと呼ばれるタンパク質がリン酸と結びつくとはこれまで知られていなかった。このタンパク質を調べれば、病気の早期発見につながることが期待される」と話しています。
元論文のタイトルは、”Ubiquitin is phosphorylated by PINK1 to activate parkin”です(論文をみる)。
PINK1というタンパク質をリン酸化する酵素とParkinというユビキチンをミトコンドリアの基質に結合させる酵素(E3)をコードする遺伝子それぞれの変異が遺伝性のパーキンソン病と関連することは以前からわかっていました。
PINK1は、Parkinが活性化されて脱分極したミトコンドリアへリクルートされるのに必要であることもわかっていました。さらに、ParkinがPINK1によってリン酸化されることもわかっていましたが、Parkingがリン酸化されただけでは、障害されたミトコンドリアでPINK1がParkinを活性化するメカニズムは説明できませんでした。
今回の論文では、PINK1がユビキチンの第65アミノ酸のセリンをリン酸化すること、このリン酸化ユビキチンがアロステリックにParkinを活性化することが報告されました。つまり、PINK1がParkinをリン酸化するだけではなく、同時にユビキチンをリン酸化することがParkinのE3活性をフルに活性化するために必要だということがわかりました。ユビキチンのリン酸化の生理的意義を明らかにした素晴らしい仕事だと思います。
パーキンソン病の神経変性もミトコンドリア障害が原因である可能性があるのですね。それにしても、NHKの選んだこのタイトルはひどいと思います。ユビキチンがパーキンソン病の治療薬になるような誤解を与えます。
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