「老化」は生命の進化において重要な役割を持っている可能性があるとの研究結果
以下は、記事の抜粋です。
シミュレーションを用いたこの研究の結果、「方向性選択」と「血縁選択」が十分にあるという条件下では、確かに老化が進化を加速させる可能性があることがわかりました。方向性選択とは、外敵の存在や環境の変化が形質を一定方向に導くというもので、キリンの首が長くなる進化がその例とされています。また、血縁選択は血縁関係にある個体の助けによって遺伝子が継承されることで、自分は繁殖せずに自分の母親にあたる女王蜂の繁殖を助ける働き蜂の例が知られています。
論文の著者の1人であるEörs Szathmáry氏は「例えば、環境が変化する中では老化や死がその個体にとって有利になる可能性があります。なぜなら、そうすることでより優れた遺伝子組成を持つ適応力の高い子孫と競合してしまい、その生存や繁殖を妨げる危険性を減らせるからです。言い方を変えると、自然な老化や死は、より優れた遺伝子を持つ新しい世代のためにスペースを譲るということなのです」と説明しました。
元論文のタイトルは、”Directional selection coupled with kin selection favors the establishment of senescence(血縁選択と結びついた方向性淘汰は、老化の確立に有利である。)”です(論文をみる)。
Eörs Szathmáry氏の説明で、「環境が変化する中では老化や死がその個体にとって有利になる可能性があります。」と書かれているのは、個体ではなく種だと思います。個体にとって有利でないのは誰が考えても明らかです。
個体でのDNA変化(変異)がなければ進化や老化はないので当たり前の話に思います。関連記事に書かれているように、最近は老化と死は別の問題として考えられているので、Gigazineの記事は少し論文の解釈を誤っています。
いずれにしても、医療で老化だけではなくいろいろな病気を治療するのは、ヒトの進化をかなり遅らせていると思いました。
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