片瀬久美子氏の「ある大学で起きた研究不正についての実例」などを読んで考えたこと

ある大学で起きた研究不正についての実例

第36回日本分子生物学会 理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」後記

紹介された実例については本物だと思います。また、「何をすべきか?」に書かれている以下の現状分析も正しいと思います。


不正の多くは論文を手っ取り早く出す為に行われていて、ズルして業績を増やすことで競争に有利になり、アカデミックポストをそれで手に入れている事例も多く、結果として、まともにやっている人達の邪魔をしています。不正を働いた方が生き残りやすいというのは皮肉な事です。
(中略)
不正の常習者が競争に勝ち残り、教授のポストを得て学生を指導することによって起きる不正の連鎖です。こうした連鎖はどこかで止めないといけません。
(中略)
研究不正は、何重にも科学研究の足を引っ張ります。正直者が馬鹿を見るというのは、特にアカデミックの世界ではできるだけ無くしていくべきです。


また、「厳罰化は対策として有効ではなく、逆に、罰則を厳しくする事で不正行為を隠ぺいしようとする力が強まってしまう恐れがあります。」というのも正しいと思います。

一方、このペンネーム 片瀬久美子氏が対策として示されているのは、不正行為が常習化する前に止めさせるために、第三者機関による相談窓口を設けることです。私は、これでは変わらないと思います。残念ながら若い研究者の立場は想像を絶するほど弱く、不正を働いた方が生き残りやすい研究者組織の構造も当分は変わらないでしょう。

欧米の大学や研究所が人事評価にimpact factorではなく、open journalなどでのpost publication reviewでの評価を活用するようになれば、日本も変わるかもしれません。悲しいですが、自浄作用ではなく外圧に期待するしかないのが現実だと思います。

コメント

  1. あ* より:

    「若い研究者の立場は想像を絶するほど弱く、不正を働いた方が生き残りやすい研究者組織の構造」は、世界的に同じですね。PTSD現象と言えましょう。

    米国のアファーマティブ・アクションも薄汚い使われ方をしてきました。それについて、米国では当然、相談窓口はあるのですが、私が大学院時代に聞いた段階でも機能していませんでしたし、その後も改善がありません。そのことを躁的に否認しているので、
    http://bit.ly/HuntsvilleShooting
    が起きますね。日本人女性も、渡米して、銃乱射しましょうか?
    …ということでは、もちろん、解決しませんので、PTSD現象学を進め、抵抗力をつけることが大事ではないかと思う次第です。

    どうも、お邪魔しました。

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