ビタミンA欠乏症を救う遺伝子組み換えイネ「ゴールデンライス」、フィリピンで2016年発売へ

世界初の遺伝子組み換えイネ、フィリピンで2016年発売へ
以下は、記事の抜粋です。


フィリピンで商業化が予定されている世界初の遺伝子組み換えイネの生産が、環境保護団体などの強い反発をよそに、今後2、3年以内に承認される見通しだと11月5日、同国の研究所などが発表した。

フィリピンに本部を置く国際稲研究所(International Rice Research Institute、IRRI)と比農業省双方の担当者が発表したところによると、GMイネの生産に反対する活動家によって8月に試験農場1か所で破壊行為があったにもかかわらず、新しく開発された遺伝子組み換え作物(GMO)の「ゴールデンライス」は試験栽培を完了したという。

IRRIのAchim Dobermann務次長によると、承認に要する期間の長さによるが、種を農家に流通させる準備が整うまでには最低でも「2年から3年」はかかるという。比農業省のバイオテクノロジー計画を統括するAntonio Alfonso氏によると、今後はGMイネの消費と栽培に関する安全性を判断するための試験を実施する予定だという。

ゴールデンライスは、ビタミンAを作り出すように遺伝子組み換えが行われている。発展途上国の多くの人々の食事にはビタミンAが不足しており、結果として免疫の低化や失明などを引き起こし、死に至る場合も多いとIRRIは指摘している。

だが多くの環境保護団体は、GMOが有害な副作用をもたらし、それが非GMO作物にも取り返しがつかないほど拡散しかねないとして、GMOに反対している。


2000年にこのトランスジェニック植物の作成が発表された時は、スイセンからのphytoene synthaseとバクテリアからのcarotene desaturaseをコードする遺伝子ともう1つの遺伝子を米粒特異的にイネに発現させるという高度な技術と、途上国の貧しい子供たちの命と視力を救うという目的のために非常に注目されました(論文をみる)。

現在では、もう1つの遺伝子は必要ないことがわかり、phytoene synthaseについてはスイセンの遺伝子を効率の良いトウモロコシの遺伝子に置き換えることで、当初の23倍も多くのベータカロチンを生産できるようになっています。

1食分のゴールデンライスは、推奨摂取量の60%のビタミンAを提供することができるとされており、世界で1億人以上の子供がビタミンA欠乏の影響を受け、毎年200万の子供達が死に50万の子供が失明している現状の改善が期待されています。なお、Syngenta社の開発技術は無償提供されています。

ところが、 本年8月に、「フィリピンで400人もの怒った農民が、遺伝子組み換えイネの試験圃場を破壊した」というニュースが報道されました。この報道は事実と異なり、実際には、「IRRIでのイベントに参加するためにバスでやってきた農民がうろたえる横で、遺伝子組み換えに反対する活動家達が穀物を破壊した」というものでした。

今後の展開を注目したいと思います。左がゴールデンライス、ビタミンAの前駆物質βカロチンを含むために黄色い色をしています。味は変わらないそうです。

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