「安価な糖尿病治療薬でロングCOVIDのリスクを40%軽減できる」という研究結果、肥満でない人にも有効な可能性
以下は、記事の抜粋です。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症、いわゆる「long COVID」を発症すると、単に発熱やせきといったインフルエンザに似た症状に苦しむだけでなく、疲労感や認知能力の低下といった症状が長期間続く可能性があります。そんなロングCOVIDのリスクを、安価で広く使われている糖尿病治療薬のメトホルミンを服用することで軽減できるという研究結果が発表されました。
ロングCOVIDは強い疲労感や体力の低下、関節痛といった身体的症状に加え、「ブレインフォグ」とも呼ばれる認知能力の低下などの症状をもたらします。
そんなロングCOVIDのリスクを薬物治療で軽減できるかどうかを調べるため、ミネソタ大学医学部のキャロリン・ブラマンテ助教らの研究チームは、アメリカに住む太りすぎまたは肥満の人々を対象にしたランダム化プラセボ対照試験を実施しました。
いずれも肥満を患っていた1126人の被験者はCOVID-19の検査で陽性と診断された後、半分が「安価な糖尿病治療薬であるメトホルミンを服用する実験群」、もう半分が「メトホルミンの偽薬を服用する対照群」に割り当てられたとのこと。
メトホルミンは肝臓での糖新生を抑制することによって血糖値を下げる糖尿病治療薬で、安価であることと費用対効果が高いことから、欧米の糖尿病治療ガイドラインでは第一選択薬に推奨されています。研究では、メトホルミンが新型コロナウイルスの増殖を抑制する可能性があると示唆されており、臨床研究でもメトホルミンがCOVID-19の死亡リスクを減少させることが示されています。
被験者を追跡調査した結果、診断から10カ月後までに1126人中93人がロングCOVIDであると診断されました。ロングCOVIDと診断された被験者はメトホルミンを服用した実験群で35人(6.3%)で、偽薬を服用した対照群では58人(10.4%)であり、メトホルミンの服用によりロングCOVIDのリスクが約40%減少することが示されました。
また、発症から4日以上経過したタイミングでメトホルミンの服用を始めた被験者よりも、症状から4日以内にメトホルミンを服用し始めた被験者の方が、ロングCOVIDのリスクが低いこともわかったとのことです。なお、今回の研究ではメトホルミン以外にイベルメクチンとフルボキサミンもテストされましたが、これらの薬はロングCOVIDのリスクを軽減させないことも示されました。
研究チームはメトホルミンが新型コロナウイルス自体に作用すると考えており、肥満でない人々のロングCOVIDリスクも軽減できると予想しています。
元論文のタイトルは、”Outpatient treatment of COVID-19 and incidence of post-COVID-19 condition over 10 months (COVID-OUT): a multicentre, randomised, quadruple-blind, parallel-group, phase 3 trial(COVID-19の外来治療と10ヶ月間のCOVID-19後の状態発生率(COVID-OUT):多施設共同無作為化四重盲検並行群間第3相臨床試験)”です(論文をみる)。
論文によると、参加者は、2×3の並列要因ランダム化(1:1:1:1:1:1)によって、メトホルミンとイベルメクチン、メトホルミンとフルボキサミン、メトホルミンとプラセボ、イベルメクチンとプラセボ、フルボキサミンとプラセボ、またはプラセボとプラセボのいずれかにランダムに割り当てられました。
症状発現後 3 日以内にメトホルミンの投与を開始した場合、ハザード比(HR)は 0.37でした。プラセボと比較して、イベルメクチン(HR 0.99)またはフルボキサミン(1.36)では、長期にわたる新型コロナウイルスの累積発生率に影響はないという結果でした。かなり期待できる結果だと思います。
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