ヒト尿メタボロームで3,000以上の代謝物を同定

研究者は尿中に何を見るか?
以下は、記事の抜粋です。


尿中に含まれる3,000以上の代謝物を同定した、というカナダ・アルバータ大学からの研究報告。主任研究者のDavid S. Wishartらのチームは、核磁気共鳴分光分析、ガスクロマトグラフィー、質量分析、液体クロマトグラフィーなどの化学分析の手法を用いて系統的かつ定量的にヒト尿中の化合物を分析した。また、彼らが同定した尿中化合物を分類整理してUMDB(尿中メタボロームデータベース)として公開した。

尿の化学的組成は、健康状態を反映するというだけでなく、食べたもの飲んだもの、薬、環境汚染物質などがさまざまな形で尿中に排泄される。

Wishartによれば、血液や組織採取の代わりに尿を用いて迅速に安価にしかも無侵襲的にさまざまな代謝産物を測定することができるかもしれない。特に彼が期待するのは大腸がん、前立腺がん、セリアック病、潰瘍性大腸炎、肺炎、あるいは臓器移植の組織適合性などで、すべて実用化に向けて検討が進んでいるという。

アルバータ大学ではヒトメタボロームの全体像を明らかにしようとしている。2008年には脳脊髄液、2011年には血液の化学組成が報告されている。「ゲノム以上にヒトの健康に有意義でまた即時的な影響力をメタボローム解析はもつと、私は信じています」と Wishartは語っている。


元論文のタイトルは、”The Human Urine Metabolome”です(論文をみる)。論文の尿サンプルは22人の健常者から得られたものです。この研究の結果、53の化合物がヒト尿中に存在することが初めて明らかになりました。また、77の化合物の尿中の定量もこの研究が最初だそうです。

また、記事にも書かれているように、各化合物の同定と定量は、核磁気共鳴分光分析(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC-MS)、質量分析(DFI/LC-MS/MS, ICP-MS)、液体クロマトグラフィー(HPLC/UV and HPLC/FD)の6つの方法で行われているのですが、一般的なスクリーニングにはNMRが適しているだろうとコメントしています。一方、質量分析はターゲットを絞った解析に向いているが、ハイスループットではないとしています。病気の診断やフォローアップに有用かどうかは今後の問題です。

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