日本でも4割の人がすでにコロナに感染 抗体調査から分かることは?国内でもコロナは広がりにくくなる?

日本でも4割の人がすでにコロナに感染 抗体調査から分かることは?国内でもコロナは広がりにくくなる?
以下は、記事の抜粋です。



先日開催された厚生科学審議会において、日本における抗体陽性率の最新の調査結果が報告されました。この結果からは、日本に住む約4割の人がすでに新型コロナに感染しているということが分かりました。今回の調査結果からは他にどのようなことが分かるでしょうか?

抗体とは、免疫システムによって作られるタンパク質のことであり、新型コロナウイルスに感染したりワクチン接種をすると、種々の抗体が作られます。
新型コロナの抗体としてはS抗体とN抗体の2種類があり、S抗体はワクチンの標的である「スパイク蛋白(S蛋白)」の抗体でありワクチン接種をした人と感染した人のいずれも陽性になるのに対し、N抗体はウイルス遺伝子を包み込んでいる「ヌクレオカプシド蛋白(N蛋白)」の抗体であり感染した人だけが陽性になるものです。

今回の調査は、2023年2月に献血した16歳〜69歳の13,121名を対象に、N抗体が測定されました。つまり、今回の調査の目的は「過去に新型コロナに感染したことがある人」がどれくらいいるのかを調査することを目的にN抗体の測定が行われました。

年齢別に見ると、N抗体の陽性率は年齢が若いほど陽性率は高く、16〜19歳の6割がすでに新型コロナに感染したことがあるようです。年齢が高くなるほどN抗体の陽性率は低下しますが、60〜69歳でも28.3%と前回の調査よりも大幅に高くなっています。

今回の調査は16歳〜69歳の献血者を対象に行われていますので、日本の全ての人口を代表しているものではありませんが、42.3%の人が感染しているとすると、日本では5300万人が感染していることになります。

2023年3月16日までに、日本では3337万人が新型コロナと診断されていますので、一部の人は再感染していることを差し引いても、感染しても診断されていない人が約2千万人いると推定されます。

海外の報告では、オミクロン株に感染した約半数は感染したことを自覚していなかった、とのことですので、今回の抗体調査の結果と合わせると日本でも自覚せずに感染している人はたくさんいると考えられます。

把握されている感染者数の規模は第7波と第8波では大きく変わらなかったにも関わらず、死亡者数は第8波の方が大幅に増えていたのは何故なのかこれまでも議論されていましたが、「実際の第8波の感染者数は第7波よりも多かったため」ということが今回の抗体調査によって明らかになりました。

オミクロン株が広がる前の2021年12月にも同様の抗体調査が行われていますが、このときの陽性率は2.5%でした。つまりほとんどの人はオミクロン株が広がってから感染していることになります。

従来のmRNAワクチンを接種した人はオミクロン株に感染しにくくなりますが、完全に感染を防ぐことは困難になってきています。一方、オミクロン株に感染した人は、同じオミクロン系統の新型コロナウイルスには感染しにくくなることが知られており、この約4割の方は(少なくとも短期的には)再感染しにくい状態と考えられます。

イギリスではN抗体の陽性率が1ヶ月ごとに報告されていますが、2023年3月2日の時点でN抗体の陽性率は86%に達しています。すでに正確な感染者数が数えられていないということもありそうですが、現在イギリスでは新型コロナの流行の波は、ピークが徐々に下がってきており感染が広がりにくくなってきています。

イギリスにおいてN抗体陽性率が約4割だったのは、今から1年以上前の2022年2月頃です。イギリスではこの頃から流行の規模が少しずつ小さくなってきていますので、日本でも今後流行の規模が小さくなっていくことは期待できるかもしれません。

しかし、XBBと呼ばれるオミクロン株の亜系統の変異株に対しては、過去にオミクロン株に感染した人であっても感染予防効果は51%にまで下がる、という報告も出ており、今後の日本国内で広がる変異株の状況次第では流行の規模の大幅な減少は期待できないかもしれません。

また、オミクロン株とは全く異なる新たな変異株が出現し広がってしまった場合には、オミクロン株に対して免疫を持った人も感染してしまうことから、今は流行が落ち着いている欧米諸国でも再び感染者が増加する可能性が高いと考えられます。こうしたことを考慮すると、日本でも「N抗体の陽性率が高くなること」が必ずしもゴールとは言えません。

感染者数の急激な増加を抑えて流行の規模をなるべく小さくすることが医療の逼迫を避けるためには必要になります。5類感染症になった後も流行状況が悪化した時期にはマスク着用、こまめな手洗い、3密を避けるなどの感染対策は重要です。

また高齢者や基礎疾患のある方など重症化リスクの高い人はワクチン接種をアップデートした状態を保つことでご自身を守るようにしましょう。


いつもながら、明快な現状分析です。免疫は時間とともに低下し、コロナが完全に地球からなくなる日は遠そうですので、ハイリスクのヒトは、コロナで死ぬ可能性を下げたいのであれば、定期的にワクチンを打つ方が無難です。

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