メルクの新しい睡眠導入薬スボレキサント、今夏にFDAが承認か
以下は、記事の抜粋です。
メルクの新しい睡眠導入薬スボレキサントは数カ月以内にFDAの承認を取得する見込みとなった。競合する旧来薬は時折発生する危険な副作用をめぐり規制当局や医師からの厳しい目にさらされている。メルクのスボレキサントは既存の旧来薬ゾルピデム(一般名、マイスリー®、Ambien®)とは異なる脳内の部位に作用する。
元記事のタイトルは、”New Entry in the Quest for a Perfect Sleep Drug”です(記事をみる)。以下は、英文記事の要約です。
アメリカでは4人に1人以上が不眠を経験し、10人に1人以上が慢性の不眠症で悩んでいる。また、これまでの薬物にはいろいろな問題があので新薬が必要である。
FDAは新薬の審査において、高用量では突然の朦朧状態をおこす可能性があるとの懸念を表明しており、低用量のみが承認される見通しだ。服用翌日のドライブへの影響などの追加試験が要求されている。「薬物が貴方の入眠と睡眠状態を改善するかだけではなく、翌日の貴方の生活を台無しにしないかどうか。」が問題なのだ。
GABA系に働くゾルピデムなどの薬物は、アルコールやバルビツール系の薬物と同様、翌日へのハングオーバーの問題がある。また、「自然な睡眠導入」というふれこみで最近導入されたメラトニン受容体アゴニスト「ロレゼム®」(一般名:ラメルテオン)も効きめが弱いためかあまり普及していない。
スボレキサントはGABA系ではなく、覚醒状態を制御するといわれるオレキシン系に作用し、脳機能の抑制メカニズムが異なるため、理論的には朦朧状態などになる可能性は低いと考えられている。しかし、スボレキサントがより健康的で副作用が少ない睡眠を提供できるかどうかがわかるのには何年もかかるだろう。実際、GABA系の薬物が多くの問題を持つことも多くの人々によって服用されて初めてわかったのだから。
1人当たりのベンゾジアゼピン系薬処方量は日本が世界で一番多く(世界で生産されている抗不安薬の40%は日本で消費されているという話もある)、国連の国際麻薬統制委員会はこれを問題視し、2010年の年次報告で不適切な処方や乱用の可能性を指摘しています。
GABA系に働くマイスリー®(一般名ゾルピデム)やコンスタン®(一般名アルプラゾラム)などのベンゾジアゼピン系薬物は不眠や不安に悩む多くの人々に対して処方されています。これらの薬物は、短期間に限って使えば比較的安全ですが、上記のように交通事故の原因や記憶力低下などをおこす可能性があります。また、高齢者では転倒や骨折の原因になります。長期に服用すると、過鎮静、記憶障害、抑うつ、感情鈍麻、耐性の形成、依存などの副作用が起こりやすくなります。
スボレキサントについても、FDAは同様の副作用を恐れているためか、上記の記事にも書かれているように、低用量のみでの使用が承認され、承認後は統制薬物として、連邦麻薬取締局の監視下に置かれることになるそうです(記事をみる)。
ベンゾジアゼピン系薬物を長期に常用すると、不安症状の悪化、パニック発作、動悸などの身体症状などが出現することがあります。いったん依存に陥ると、薬からの離脱が非常に困難になる場合もあります。これらの問題を、新しく登場する抗オレキシン薬が部分的にでも解決してくれると良いのですが、、、
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コメント
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はじめまして。
看護学校で解剖生理や薬理学を教えてもらってから 特に薬理学が好きになりました!
苦手ではありますが 色々質問させていただいてもよろしいですか?
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>ゆうさん
コメントありがとうございました。何でも答えられるかどうかわかりませんが、どうぞ質問してください。
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>takさん
薬学初心者の私には blogに書いてある事の意味すら 理解できていない事が多々あるのですが 膵臓からの新ホルモンの発見があったとか…
今後 糖尿病でインスリンなど使われてる方の負担の軽減になって欲しいなと思います。
大学で薬理学を教えていらっしゃるんですよね。
主にどんな研究をされていらっしゃるんですか?
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>ゆうさん
ご質問ありがとうございます。
以下のホームページにこれまでやってきた研究が紹介されています。
http://www.med.kobe-u.ac.jp/pharma/welcome.html
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初見です!ブログ読みました!分かる分かる!って感じの記事があったのでついコメントしたくなりました…これも何かの縁なので、是非交流していきましょう!よろしくどうぞ!!