COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は14.6%で、禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(5.15%)であった。

COVID-19入院患者におけるパキロビッド禁忌の割合は?
以下は、記事の抜粋です。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬のニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)は、経口投与の利便性と、入院または死亡に対する高い有効性のため、多くのハイリスク患者にとって好ましい治療薬とされている。しかし、本剤は併用禁忌の薬剤が多数あるため、使用できる患者は限られる。フランスのNicolas Hoertel氏らの研究グループは、重症化リスクの高いCOVID-19患者において、ニルマトレルビル/リトナビルが禁忌である割合について調査した。

本剤の禁忌については、リトナビルはチトクロームP450 3A(CYP3A)酵素を阻害し、CYP3Aの薬物代謝に高度に依存する薬剤の濃度を上昇させることで、重篤な副作用を引き起こす可能性がある。また、強力なCYP3A誘導薬との併用により、ニルマトレルビルの濃度が著しく低下し、抗ウイルス効果が失われる可能性がある。重度の腎機能障害もしくは肝機能障害を有する患者も本剤の禁忌とされた。これらの医学的禁忌は、重症化リスクが高いCOVID-19患者に広くみられる可能性がある。

本研究では、2020年1月24日~2021年11月30日の期間で、パリ大学の36の大規模病院におけるCOVID-19入院患者6万2,525例において、米国食品医薬品局(FDA)がニルマトレルビル/リトナビルを禁忌とした条件に当てはまる患者の割合が調査された。

主な結果は以下のとおり。

・年齢中央値52.8歳(33.8~70.5)、女性3万1,561例(50.5%)、男性3万964例(49.5%)、入院後28日以内に死亡した患者4,861例。
・COVID-19入院患者6万2,525例のうち、9,136例(14.6%)がニルマトレルビル/リトナビルの医学的禁忌を有していた
・禁忌を有していた患者の割合は、男性18.0%(5,568例/3万964例)、女性11.3%(3,577例/3万1,561例)で、男性のほうが女性よりも高かった。
・禁忌を有していた患者の割合は、66歳以上26.9%(5,398例/2万64例)、65歳以下8.8%(3,738例/4万2,461例)で、高齢者のほうが若年者よりも高かった。
・禁忌を有していた患者の割合は、併存疾患のある患者のほとんどの疾患で37.0%以上、併存疾患のない患者で3.9%(1,475/3万7,748例)となり、併存疾患のある患者のほうが、ない患者よりも高かった。
・死亡した4,861例のうち、2,463例(50.7%)が禁忌を有していた。
・死亡した患者で禁忌を有していた者の割合は、男性、女性、高齢者、若年者ではそれぞれ50%前後であったが、併存疾患のある者ではほとんどの疾患で60~70%台で、腎尿路生殖器系の疾患では91.5%であった。
・禁忌を有していた患者で最も多かった条件は、重度の腎機能障害(3,958例、6.33%)と、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤の使用(3,233例、5.15%)であった。


日本では、クリアランスがCYP3Aに依存する薬剤で「併用禁忌」ではなく「併用注意」の薬物を服用している患者でもパキロビッドパックの使用が躊躇されることが多いようですが、この結果をみれば入院患者という比較的重症の場合でも9割近い患者に使えることがわかります。

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