乳がんの代替治療は、5年以内の死亡率が標準治療の5.7倍だった。一方、前立腺がんでは有意な違いはなかった。

がんの代替治療は、5年以内の死亡率が標準治療の「最大5.7倍」だった
小林麻央さんが乳がんの治療に代替医療を選択したことはよく知られていますが、どの程度誤った選択だったかの科学的な評価はありませんでした。以下は、種々のがんについて、代替医療と標準医療を比較した論文を紹介する記事の抜粋です。


がん患者の一部は標準治療ではなく、代替治療を選択する。ホメオパシー、幹細胞注射液、サプリメントや胎盤薬などには、直接的に危害を与える可能性がある。科学的な根拠のない代替治療は明らかに危険だ。これらが、根拠のある普通の治療に代替され、結果的に被害を受けることがある。

明らかなリスクを測定するのが難しいのは、代替治療を選んだ患者の多くが標準治療を捨ててしまっており、自身のデータを提供しようとしないからだ。

Journal of the National Cancer Institute誌に発表された論文によると、がんの代替治療を選択して標準的な治療をしなかった人々が5年以内に死亡するリスクは、標準治療を忠実に続けた人々と比べて最大で5.7倍も増加するという。

研究は、2004年から2013年の間に米国で最も多かった4種類のがん(乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん)を分析の対象にしている。全米で、がん患者のデータベースを検索し、標準治療を受けずに代替治療の記述が診療記録に含まれている患者の事例を探した。

標準治療とは、「化学療法、放射線治療、手術と、場合によってはホルモン療法も追加」と定義されている。代替治療とは、単に「その他の証明されていないもの。医療関係者以外が行ったがん治療」とした。

標準治療の代わりに代替治療を選んだ患者の記録は280件だった。そうした患者の傾向としては、女性で若く、学歴と収入が高く、複雑な健康状態を抱えている人が多かった。

乳がん患者については、代替治療を受けた人々が5年以内に死亡する可能性は、標準治療を受けた人々と比べて5.7倍高かった。大腸がん患者の場合は4.6倍、肺がん患者では2.2倍高かった。一方、比較的進行が遅い前立腺がんの患者の死亡率については、選択した治療の種類にかかわらず、統計上、有意な違いは見られなかった。


元論文のタイトルは、”Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival”です(論文をみる)。

私が一番印象に残ったのは、前立腺がんでは標準治療と代替医療の間に有意差が認められなかったことです。記事にも書かれているように、症例数があまり多くないためかとも思いましたが、論文をみると標準医療142例、代替医療71例の結果なので、そうでもなさそうです。

以下の図で、Aはすべてのがん、Bは乳がん、Cは前立腺がん、Dは肺がん、Eは大腸がんです。実線が代替医療、点線が標準医療です。前立腺がんは、「がんで死ぬ」よりも「がんと死ぬ」確率の高いがんだと思います。天皇は前立腺がんでかなりラジカルな手術を受けたようです。見つけた医師も標準治療とされている手術をしないわけにはいかなかったのでしょう。

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