アトピー性皮膚炎の痒みに対する新たな抗体医薬、ネモリズマブ(商品名ミチーガ)

アトピー性皮膚炎に対する新たな抗体医薬
以下は、記事の抜粋です。


2022年3月28日、ヒト化抗ヒトインターロイキン(IL)‐31受容体Aモノクローナル抗体のネモリズマブ(遺伝子組換え)(商品名ミチーガ皮下注用60mgシリンジ)の製造販売が承認された。適応として「アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)」、用法用量は「成人及び13歳以上の小児に、1回60mgを4週間間隔で皮下投与する」となっている。

アトピー性皮膚炎(AD) は、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする慢性炎症性疾患である。特に、中等度から重症のADは、広範囲な発疹を特徴として、持続する難治性の痒み、皮膚の乾燥、亀裂、紅斑などの皮膚症状と共に掻破による毛細血管出血を伴うことがある。患者にとって、痒みが最も大きな負担となり、集中力の低下や睡眠障害などは著しく患者のQOL低下を来す。

現在、薬物療法としては、抗炎症外用薬のステロイドおよびタクロリムス(プロトピック他)が中心的治療薬として位置付けられており、さらに近年、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有したデルゴシチニブ(コレクチム)が登場した。さらに、これら外用薬でも効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体の皮下注製剤デュピルマブ(遺伝子組換え)(デュピクセント)、JAK阻害薬のバリシチニブ(オルミエント)などの経口薬が臨床使用されている。

ADの掻痒においては、ステロイドなど抗炎症外用薬の中心的薬剤の併用の下、補助療法として抗ヒスタミン薬の内服が用いられている。しかし、抗ヒスタミン薬の掻痒軽減効果はADの重症度や病像などにより異なることから、掻痒の軽減やコントロールができない症例も存在し、問題となっていた。

ネモリズマブは、IL-31受容体A(IL-31RA)を標的とした、ADの掻痒に対する初の抗体医薬品である。ADの皮疹部ではTh2細胞が活性化しており、主にTh2細胞から産生されるサイトカインのIL-31は、ADの主な起痒物質の1つとして知られている。ネモリズマブは、IL-31と競合的にIL-31RAに結合することによって、IL-31の受容体への結合およびそれに続く細胞内へのシグナル伝達を阻害し、掻痒を抑制することが期待されている。既存治療でも中等度以上の掻痒を有する13歳以上のAD患者を対象とした国内第III相試験において、本薬の有効性および安全性が確認された。

副作用として、主なものは皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染など)(18.8%)、アトピー性皮膚炎(18.5%)、上気道炎(5%以上)などであり、重大なものは重篤な感染症(3.4%)が報告されているので、十分注意する必要がある。


アトピー性皮膚炎での痒みが軽減されるのは素晴らしいことだと思います。問題は適応の範囲です。

現在の価格は、1本117,181円ですので3割負担の場合、35,154円(薬剤費のみ)です。4週間に1回注射するとすると、年間では約46万円になります。個人の負担も問題ですが、アトピー性皮膚炎の患者さんは多いので、適応「アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の範囲によっては、健康保険に対してかなりの負担になると思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました