ノロウイルス感染の疑いが出た場合に 「病院に行ってはいけない」は本当か?
以下は、記事の抜粋です。
ノロと診断されること自体にも意味は無い?
フジテレビの「とくダネ!」では2012年12月18日にノロウイルスにかかったらどうすればいいか、の特集を組んだ。
番組コメンテーターの宋美玄さんは、ノロウイルスには抗生物質も下痢止めも効かず、特に下痢止めを使ってしまうとウイルスの排出を妨げる。特効薬などは無いため、イオン飲料と糖分を摂取し、ひたすらトイレで耐えるしかなかった、という。そしてこう語った。「時々、ノロウイルスかどうか診断してもらって来い、という学校や職場があるけれども意味が無い。ノロと診断されること自体にも意味は無く、病院に行くのはやめたほうがいい」
つまり、ノロウイルスだった場合は、病院に来ている人は弱っているため感染しやすく迷惑。通院すること自体も辛いし、お金もかかる。特効薬もないわけだから自宅で耐えるしかなく、症状が酷かったり、ぐったりした場合を除いての通院は無意味だというのだ。番組全体でも、病院に行ってもしょうがない、という論調だった。
感染が疑われた場合は病院に来てください
確かにノロウイルスの感染力は強く、感染者はむやみに出歩かないほうがいい、ということも考えられる。しかし病院に行かないほうが本当にいいのだろうか。
都内にある大学病院に問い合わせたところ、担当者は驚いていて、「ノロウイルスに感染したのか、それともインフルエンザなのか、単なる胃腸炎なのかはご自身では判断できませんから、病院で診断を受けるのは当然です。また、ノロウイルスの場合は、感染経路を知る必要もありますので、『病院に行くな』はありえません」
そして、厚生労働省のサイトの「ノロウイルスに関するQ&A」には、「感染が疑われた場合、どこに相談すればいいのですか?」という項目があり、回答が「最寄りの保健所やかかりつけの医師にご相談下さい」と掲載されているため、病院や医師はいつでもノロウイルスの相談を受けるはずだ、と話していた。
この記事は、フジテレビを攻撃するために宋美玄さんが話したとする内容を全面否定しているようですが、私は、彼女が言っているとされていることも大半は正しいと思います。具体的には、以下の4つはほぼ正しいです。
●ノロウイルスには抗生物質も下痢止めも効かない。
●下痢止めを使ってしまうとウイルスの排出を妨げる。
●特効薬などは無いため、イオン飲料と糖分を摂取し、ひたすらトイレで耐えるしかなかった。
●ノロと診断されること自体にも意味は無い。
彼女の発言とされる上の4つの中、上の2つは完全に正しい。また、3つ目についても、経口摂取が可能な人の場合には適切な対応です。しかし、4つめは微妙です。診断することには公衆衛生上の意味はあります。しかし、原因治療はないのですから、当該患者の予後には影響しません。実際、ノロウイルスの迅速診断キットはありますが、あまり使われていません。
宋美玄さんの発言で明らかな誤りは、どんな患者の状態でも「病院に行くのはやめたほうがいい」ととられかねない部分があることです。関連記事に書いたように、治療では下痢と発熱に伴う脱水の補正が最重要です。脱水の程度がひどい場合は、補液を中心とした入院加療の必要があります。
大学のコメントは、高齢者など重症になりやすい症例を意識したもので、公式にはこれしかありえないものです。一方、宋さんのような健常人で経口摂取が可能な場合には、彼女のような対応で十分です。詳しくは、関連記事をご覧ください。
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