「アニサキス殺虫装置」の開発

刺身に電気を流して「アニサキス」撲滅 苦節30年、社長の執念が実った開発秘話
以下は、記事の抜粋です。


福岡市の水産加工メーカー、ジャパンシーフーズ(社長:井上陽一氏)は、1987年設立。主にアジやサバの生食加工品を手掛け、スーパーマーケットや飲食店に卸している。アジの生食用加工食品で国内トップシェアを誇る。

ジャパンシーフーズが熊本大学などと連携し開発した「アニサキス殺虫装置」は、切り身に100メガワットの電気を瞬間的に流すことで、アニサキスを殺虫する仕組みだ。一度に3キロのアジの切り身を6分で処理できる。

アニサキスは、サバやアジのほか、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生。白色で少し太い糸のような見た目をし、長さは2~3センチ、幅は0.5~1ミリと目視できる大きさだ。もともと魚介類の内臓に寄生しているが、魚介類が死亡し時間が経つと、内臓から筋肉に移動することが知られている。

厚生労働省がまとめた21年の食中毒発生件数は717件。新型コロナウイルス対策による衛生意識の向上などで、発生件数は過去20年で最少となったが、このうち半数近い344件が、アニサキスによるものだ。次いで、カンピロバクター(154件)、ノロウイルス(72件)と続く。食中毒の発生件数は、アニサキスを原因とするものが18年以来、4年連続1位となっている。

アニサキスの有効な殺虫方法は、冷凍(マイナス20℃で24時間以上)するか、加熱(70℃以上、または60℃で1分)するかだが、それでは刺身の品質や鮮度が落ちてしまう。

熊本大学の浪平隆男准教授は、冷凍・加熱以外でアニサキスを殺虫する方法として、「パルスパワー」という瞬間的な超巨大電力を用いた新たな殺虫方法を用いた「アニサキス殺虫装置」が誕生した。現在、ジャパンシーフーズの工場ではアニサキス殺虫装置1台が稼働する。昨秋から、装置で殺虫処理をした生食用刺身の出荷を始めている。

一方、装置は実験機との位置づけで、1日あたりの殺虫処理能力は、アジの切り身で約50~60キロ。ジャパンシーフーズは1日あたり約4トンの加工食品を生産しており、殺虫処理能力としてはまだまだ十分ではない。不足分は、今も水流でアニサキスを弾き飛ばしたり、紫外線を使った目視検査のほか、身に潜らないように鮮度管理を徹底したりする――などの対応を重ねている。

ジャパンシーフーズは現在、実験機に代わる次世代型の大量処理が可能な装置の開発も進めている。次世代機はコンベアを用いた流れ作業の中で、電流を加える仕組みを採用するという。さらに小型化を実現し、飲食店などでの設置を目指した開発も視野に入れている。

飲食店向けの小型装置が実現すれば、サンマの刺身の販売も可能になる。「アニサキスへの懸念からなくなってしまった刺身を復活できるかもしれない」と井上社長は期待を込める。


「社長の執念が実った」と書かれていますが、コストや処理能力を考えると実用化への道のりはまだまだの気がします。私は、イワシやアジやサバやサンマの刺身を食べたいとはあまり思いません。

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