Targeting VEGF-B as a novel treatment for insulin resistance and type 2 diabetes
以下は、論文要約の抜粋です。
末梢組織への過剰な脂質沈着は、インスリン感受性とグルコースの取り込みを損なうため、2型糖尿病発症の原因になると考えられている。しかし、異所性の脂質蓄積を直接の標的とした治療法はない。
最近、血管内皮細胞増殖因子B(VEGF-B)が心臓や骨格筋の内皮細胞において脂肪酸の取り込みや輸送を制御していることが明らかになっている。本研究では、ネズミの2型糖尿病モデルでVEGF-Bシグナルを減らすと、インスリン感受性が回復し、グルコース耐性が改善することを明らかにした。
糖尿病性db/dbマウスでVegfb遺伝子を欠失させると、異所性の脂質沈着が予防され、筋肉のグルコース取り込みが増え、正常血糖が維持された。 同様に、抗体によってVEGF-Bシグナルを薬理学的に阻害しても、グルコース耐性が強くなり、膵ラ氏島の構造が保護され、2型糖尿病やメタボリックシンドロームの重要な特徴であるβ細胞の機能と脂質異常症が改善された。
2型糖尿病の治療におけるVEGF-Bシグナルの中和の可能性をさらに明らかにするため、高脂肪食を与えたラットでさらに調べたところ、インスリン感受性が正常化し、骨格筋と心臓でのグルコース取り込みが増加した。
これらの結果は、重度の肥満や2型糖尿病という条件下においても、血管内皮は筋肉の過剰な脂質取り込みを防ぐための有効なバリアになりうることおよび、VEGF-Bシグナルの阻害によってこのバリアが維持できることが示された。VEGF-Bシグナルの阻害は、2型糖尿病の新しい薬物治療法標的だと考えられる。
VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor、血管内皮細胞成長因子)は血管やリンパ管新生作用をもつ増殖因子です。VEGFファミリーには、異なる遺伝子にコードされるVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、PLGF-1およびPLGF-2の7種類のメンバーが存在します。さらにVEGF-Aおよび-Bにはスプライシングによるサブタイプが存在します。
VEGF-Aの中和抗体としては、ベバシズマブ(bevacizumab、アバスチン®)が治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して、ラニビズマブ(ranibizumab、ルセンティス®)が加齢黄斑変性に対して使われています。
一方、VDGF受容体にもいくつかの種類があり、VEGF-Bと結合するものとしてFlt-1(Fms-like Tyrosine Kinase)が知られています。これはVEGF-Aとも結合します。Flt-1のノックアウトマウスは血管網の形成に異常をきたして胎生致死となります。Flt-1のチロシンキナーゼ活性を阻害する薬物は抗がん薬として開発されているようですが、臨床で使われているものはまだありません。
これらを考えると、糖尿病治療という目的では、VEGF-Bシグナルを選択的に阻害する必要があるために、Flt-1阻害薬ではなくVEGF-Bの中和抗体を使うことになりそうです。いずれにしても、金がかかり過ぎます。医療体制が破綻しそうです。
関連記事
DICER1欠損は加齢性黄斑変性症におけるAlu反復配列RNA毒性を誘導する
抗がん剤アバスチン、米で転移性乳がんへの適用取り消し
コメント
SECRET: 0
PASS:
Thank you for your article!