合併症のない急性副鼻腔炎に抗生物質は無効

Amoxicillin for Acute Rhinosinusitis―A Randomized Controlled Trial

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:急性副鼻腔炎に対する抗生物質治療の有効性を支持するエビデンスは限られているにもかかわらず、抗生物質は広く用いられている。

目的:臨床的に急性副鼻腔炎と診断された成人について、対症療法に対するアモキシシリン治療による効果増を検証する。

方法:2006年11月1日から2009年5月1日まで、ミズーリ州の10箇所において合併症のない成人急性副鼻腔炎患者を対象とするランダム化対照試験を行った。10日間にわたって、アモキシシリン(1500mg/d) あるいはプラセボを比較し、痛み、発熱、咳、鼻づまりなどの症状については、必要に応じて対症療法を行った。

アウトカム測定:主要アウトカムは治療開始3-4日後の”the Sinonasal Outcome Test-16″という副鼻腔評価尺度により測定した疾病特異的QOLの改善とした。3、7、10、28日後に電話でインタビューを行った。

結果:166例(男性36%、白人78%)のランダム化試験の結果、3日目と10日目における症状改善報告では統計学的な有意差はみられなかった。しかし、7日目ではアモキシシリンにおいて症状改善の報告が多かった(74% vs 56%)。特に、鼻閉がある患者において症状改善は有意だった。

結論:急性副鼻腔炎患者における10日間アモキシシリン治療は、治療3日後の症状の改善をもたらさない。


副鼻腔炎は「蓄膿症」とも呼ばれる一般的な病気です。黄色くて膿のような鼻汁、頑固な鼻閉が主な症状です。副鼻腔とは「鼻の周りの骨が空洞になっている部分」のことで、眼の下辺りや、眼の内側、眼の上の骨の中などにあります。副鼻腔の空洞は鼻の中に連なっています。そのため、風邪をひいたときなどに細菌が入って繁殖すると副鼻腔炎になるとされています。

これからすると、いかにも抗生物質が効きそうです。そのせいか、日本でも欧米でも抗生物質の処方が一般化し、患者がそれを希望するケースも多いそうです。しかし、エビデンスは限られていたため、ワシントン大学のJane M. Garbutt氏らは、最もよく使用される抗生物質であるアモキシシリンの有効性を検証するランダム化対照試験を行ないました。その結果を報告したのが上記論文です。

同氏らは、重大な合併症を示す症例には違う管理方法が必要になるだろうとしていますが、「合併症のない急性鼻副鼻腔炎へのルーチンの抗菌薬使用は避けるべきとする英国や米国の最新ガイドラインの推奨を支持する結果だ」としています。

日本鼻科学会の「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン」では以下のように書かれています―「急性鼻副鼻腔炎は上気道炎に引き続き発症し,発症当初はウイルス感染が主体とされるため,軽症に限っては抗菌薬の効果は期待できない。自然経過を観察することで症状の悪化があり,中等症や重症に移行すれば抗菌薬治療を開始する。抗菌薬の過剰投与は耐性菌の増加につながり,抗菌薬投与,非投与を適切に判断することが重要である。急性鼻副鼻腔炎いおいて最初はウイルス感染から発症することが多いため,抗菌薬は不要であるという考え方が一般的である。」―「発症当初」から「合併症が無い場合」に変わるのでしょうか?

コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早う御座います、何時も有意義な記事感謝しています。
    自分は昔から鼻が弱く、風邪ひくと必ずと言っていいほど副鼻腔炎併発、拗れると蓄膿レベル、
    黄色い鼻汁が目安。
    何度も罹患、最後は10年ほど前耳鼻科で処方されたガチフロが著効。
    ガチフロ(製造中止)を今でも冷蔵庫に温存。
    以来用心深くなってるので蓄膿には進展しませんが。
    どの時点で抗生剤使用するかの判断が難しそう。
    本日も研究、講義、お疲れ様です。
                     taniyan

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