長寿遺伝子を探せ ゲノム解読コン、賞金1千万ドル
以下は、記事の抜粋です。
米非営利団体「X賞財団」は10月26日、100歳以上の健康な100人のゲノム(全遺伝情報)を解読し、正確さを競うコンテストを2013年に実施すると発表した。優勝チームには賞金1千万ドル(約7億9千万円)が贈られる。
参加チームには分析に使う100人の試料が渡され、30日以内にゲノムを解析して提出する。1人当たりの費用を1千ドル未満にすることが条件で、誤差が少ないチームが優勝となる。コンテスト終了後、得られたデータをデータベース化して公開する。
100歳以上を解析の対象にする理由について、財団では「健康で長生きするための遺伝学的な秘密がわかれば医学の発展に貢献できる」と説明、協力者を世界中から募る。共催者の一人でヒトゲノム解読にかかわったクレイグ・ベンター博士は「パーソナルゲノムの時代の先駆けとなるコンテストになるだろう」と語った。
「続きは朝日新聞デジタルでご覧いただけます」と書いてありましたが、見ていません。”X prize”でググったら多くのニュースが出てきました。Los Angeles Timesのタイトルは、”X Prize Foundation takes on the human genome”です(記事をみる)。
Los Angeles Timesには、”X Prize”の提案者の一人であるJ. Craig Venter氏のインタビュー記事があります。Venter氏は、現代医療が”medical grade”の安価なゲノム解読を必要とする理由と”X Prize”がその開発を加速できる理由を以下のように説明しています。
“medical grade”とは彼らが作った造語です。Venter氏は、現在のDNA配列決定技術はかなり速く安くなったけれども、診断ツールとして用いるには正確さが不足していると話しています。偽陽性や偽陰性がなく、患者が将来罹る可能性のある病気を正確に予防できるレベルの正確さが必要だそうです。
現在用いられているサンガー法という配列決定法ではコストがかかりすぎるので、正確さと低コストを実現する新しい技術開発が必要だというのが彼の考えです。今回のコンテストは、この開発を加速するために企画されたそうです。
大学と企業のどちらがこのコンテストの勝者になるか?という質問に答えて、「次世代」と称するDNAシーケンサーを作って売っている企業はあることはあるが、まだどこも100人分のゲノムを30日以内で、しかも1人当たりの費用を1千ドル未満で正確に読む、という規準をクリアしているところはないと述べています。一方、大学やベンチャーには、速く、安く、正確なDNAシーケンサーを作るすごい解決法を見つけたという話もあるので、勝負はまだわからないと答えています。
それにしても、Venter氏が今の「次世代シーケンサー」ではまだまだダメだと考えているのは流石だと思いました。やはり、私のアイドルだけのことはあります。
以上のように、X Prizeの目的は、長寿遺伝子を探すことではなく、速く(1日で3人分のゲノム解読)、安く(ゲノム解読コストは1人分4万円以下)、かつ病気の診断に使えるほど正確なDNAシーケンス技術の開発です。朝日のタイトルはmisleadingです。
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