新規薬剤標的に関する論文データの再現率は21%

薬剤標的が滑ってひっそり消えていく

以下は、記事の抜粋です。


薬剤開発計画は、新しい薬剤標的についての論文が出発点となることが多い。しかし、そのような論文の信頼性を正しく評価するためには、科学的発見や論文発表の過程をしっかりと見極める目が必要だ。

バイエル・ヘルスケア社の研究者によれば、新規薬剤標的に関する論文を実験によって検証したところ、調べた67報のうちで論文とまったく一致する結果が得られたものは21%であった。再現率が21%というのは極めて低い。

このように、専門家による査読過程や有名雑誌への論文掲載は「科学的真実」を保証するものではなく、著者も出版社も、結果を誇大宣伝しないように注意しなければならない。


元記事のタイトルは、”Drug targets slip-sliding away”です(記事をみる)。また、バイエル・ヘルスケア社の研究者の報告のタイトルは、”Believe it or not: how much can we rely on published data on potential drug targets?”です(記事をみる)。

報告によると、論文発表されたデータで再現できないものは多く、大学や企業の知り合いに聞くと、彼らも同様の印象―「論文発表されたデータは再現しにくい」―を持っているそうです。しかし、これらの事実は一般には認識されておらず、科学雑誌にもこのようなトピックがとりあげられないのは驚きだとしています。

また、これらの論文の多くは抗がん剤の標的に関するものですが、超一流雑誌への掲載(あるいはインパクトファクター)、特定の標的分子に関する論文の数や独立した研究グループの数なども実験の再現性と相関しなかったとしています。

再現性がない理由として、サンプル数や統計学的問題の他に、1)研究室間の激烈な競争と論文発表への圧力、2)良い雑誌にアクセプトされるためにポジディブなデータだけを選別して論文を書く、などがあげられています。上のNature Medicineの記事では、2)が一番ありそうだとしています。

下のグラフをみると、再現性の良い論文が21%、主なデータが再現できたものが7%、一部のデータが再現できたものが4%で、再現できないものが65%もありました。日本はアメリカから、ポスドク制度や”Publish or Perish”システムを輸入したわけですが、これらの数字も一緒に輸入してしまったような気がします。

67件の論文発表データの再現性解析(nature reviewsより、クリックで拡大します)

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