腎からの排泄が少ないDPP-4阻害薬リナグリプチン(linagliptin、トラゼンタ®)を発売

腎機能の程度にかかわらず用量調整が不要のDPP-4阻害薬「トラゼンタ錠 5mg」

発売は、9月15日でした。以下は、同剤承認記事の抜粋です。


日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは7月1日、選択的経口DPP-4阻害薬「トラゼンタ錠 5mg」(一般名:リナグリプチン)の製造販売承認を取得したと発表した。トラゼンタは、ベーリンガーインゲルハイムが創薬・開発した選択的経口DPP-4阻害薬。DPP-4を選択的に阻害することで、インクレチンホルモンであるGLP-1の血中濃度を高め、血糖低下作用を発揮する。GLP-1は血糖依存的に分泌されるので、DPP-4阻害剤は低血糖のリスクの発現が低い。

同剤は主な排泄経路が腎臓でなく、糞中に未変化体のまま排泄される世界初の胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤であることが特長。

腎機能低下のリスクが高い、あるいはすでに腎機能障害を合併している糖尿病患者は少なくない。腎機能が低下している患者は、慢性腎不全への進行や、心血管病発症のリスクが高いため、その進行を止めることが重要となる。また、腎機能が低下している2型糖尿病患者では、低血糖リスクが高まることが知られている。そのため腎機能に配慮した治療法が求められている。

米国では2011年5月に承認された。日本では、日本ベーリンガーインゲルハイムが製造・販売を行い、同社と日本イーライリリーが共同販促する。

通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。国内で実施された臨床試験では、694例中76例(11.0%)に臨床検査値の異常を含む副作用が認められた。主な副作用は便秘14件(2.0%)、鼓腸11件(1.6%)、腹部膨満7件(1.0%)等。


DPP-4阻害薬とは、インクレチンというGIP(Gastric Inhibitory Polypeptide)とGLP-1(Glucagon-Like Peptide-1)の2つのペプチドホルモンを分解するdipeptidyl peptidase-4(DPP-4)という酵素を特異的に阻害する薬物です。

GIPは主に小腸上部のK細胞から、GLP-1は小腸下部のL細胞から分泌され、どちらも膵β細胞からのインスリン分泌を促進する作用を持ちます。DPP-4阻害薬は高血糖時にのみ作用するので、低血糖の発現を気にすることなくHbA1cを効率よく下げられるとされていますが、他の抗糖尿病薬(特にSU薬)と併用する場合には当然、重症の低血糖がおこり易くなるので注意が必要です。

副作用は、他の生理活性ペプチドの分解を阻害することによっておこると考えられます。急性膵炎の症例報告もあります。

現在、国内で販売されているDPP-4阻害薬は、シタグリプチン(sitagliptin、ジャヌビア®、万有、グラクティブ®、小野)、ビルダグリプチン(vildagliptin、エクア®、ノバルティス)、アログリプチン(alogliptin、ネシーナ®、武田)と本剤の計4種類です。

GLP-1アナログは、リラグルチド(liraglutide、ビクトーザ®、ノボ ノルディスク)とエキセナチド(exenatide、バイエッタ®、イーライリリー)が販売されています。こちらは、ペプチドなので経口投与できず、インスリンのように皮下注射する必要があります。

FDAはリナグリプチンを、単独投与またはその他の一般に処方されている2型糖尿病治療薬(メトホルミン、スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン)との併用投与で承認しましたが、日本では単独投与のみが承認されています。これは、苦しい制約です。

体重増加もなく、肝・腎の障害があっても、禁忌や慎重投与でない点が高く評価できますので、他剤との併用が承認されればかなりの売上が期待できます。ただ、臨床試験では、リナグリプチン投与群はHbA1c値をプラセボ群と比較して0.7%下げる程度ですので、αグルコシダーゼ阻害剤のボグリボース(ベイスン®)よりも少し良く効きますが、効果が強いとは言えません。

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コメント

  1. 石井博 より:

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    ドイツ糖尿病学会の見解に注意したいもの

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