昼寝の多さは自己責任ではなく遺伝? 昼寝と生活習慣病に関わる遺伝子を発見

昼寝の多さは自己責任ではなく遺伝? 昼寝と生活習慣病に関わる遺伝子を発見
以下は、記事の抜粋です。


最近、ハーバード大学の研究グループが昼寝の頻度と関連する遺伝子を多数見つけ、その多くが生活習慣病と関連していることを明らかにした。

この研究は約50万人が参加している英国バイオバンクの遺伝情報を活用して行われた。このバンクには、英国在住の40~69歳のボランティアが自身のゲノムと血液、尿、唾液などの生体試料、ライフスタイルや健康情報を提供し、その後も追跡研究に協力している。

ハーバード大学のグループが彼らの遺伝情報を解析したところ、昼寝の頻度と関連する123の遺伝子座が見つかった。参加者はライフスタイルに関する質問の中で、「日中に昼寝をしますか」という項目に、「したことがない/まれ」「時々」「通常」「答えたくない」の4つの中から回答している。

参加者のうち約10万人はアクチグラフという腕時計型デバイスで客観的な睡眠計測も行っている。123の遺伝子の内の幾つかは昼寝が疑われる休息時間の長さとの関連が確認されている。自己申告だけではなく客観的昼寝データでも関連が見られたことはこのデータの信憑性を高めている。

さらに、研究者らは約54万人が参加している23andMeの遺伝研究コホートのデータを活用して、英国バイオバンクで得られた結果を検証した。その結果、123の遺伝子座のうち61の遺伝子座で再び昼寝との関連が認められた。ちなみに、こちらの参加者は「週に何日、15分以上の昼寝をしますか?」という質問に、0日~7日の範囲内で回答している。

異なるサンプルを用いても結果が再現されたことから、少なくともこの61の遺伝子座に含まれる遺伝子群は昼寝に関連している可能性が非常に高いと言ってよいだろう。

オレキシンというホルモンの受容体遺伝子が遺伝子座に含まれており、さらに詳しく調べて診ると、そのタイプによって昼寝の回数が異なっていた。つまり、覚醒力が低い遺伝子パターンを持っている人がより多く昼寝をしている可能性があるのだ。このことは、少なくとも昼寝行動の一部は遺伝的な影響を受けている可能性を示している。

今回昼寝の頻度に関連して見つかった遺伝子座の中には、過去の研究で代謝、肥満、高血圧などとの関連が知られている遺伝子が多く含まれていた。例えば、神経細胞の分化・発達に関与している「PNOC」という遺伝子が作るタンパク質は肥満リスクと同時に、オレキシンの作用を抑える脳内物質の生成にも関わっている。

さらに、イビキの多さ、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、不眠症、レストレスレッグス症候群、夜型傾向(クロノタイプ)など睡眠の質を低下させ、かつ生活習慣病のリスクを高めることが実証されている睡眠障害との関連が疑われている遺伝子や、人での機能はまだよく分かっていないが線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュなどの生物で睡眠行動や生体リズムの調整に関わっている遺伝子も含まれていた。


元論文のタイトルは、”Genetic determinants of daytime napping and effects on cardiometabolic health(日中の昼寝の遺伝的決定因子と心血管疾患への影響)です(論文をみる)。以下は、論文の要約です。


昼寝は、遺伝的によく見られる行動ですが、その遺伝的基盤や心血管疾患との因果関係はいまだ不明です。本研究では、UK Biobank(n = 452,633)において、自己申告による昼間の昼寝のゲノムワイド関連研究を行い、123の遺伝子座を同定し、そのうち61の遺伝子座は、23andMe研究コホート(n = 541,333)でも再現されました。

その結果、睡眠障害の創薬ターゲットとして確立されている遺伝子(HCRTR1、HCRTR2)、覚醒に関与する遺伝子(TRPC6、PNOC)、肥満-過眠経路を示唆する遺伝子(PNOC、PATJ)などの遺伝子変異(ミスセンスバリアント)が見つかりました。関連シグナルは、加速度計で測定した日中の活動時間と一致しており、33の遺伝子座は他の睡眠表現型の遺伝子座と共局在していた。クラスター解析では、昼寝を促進するメカニズムが3つの異なるクラスターが同定され、それぞれのクラスターと心血管疾患のアウトカムとの関連性が異なることが明らかになった。観察研究データから因果推論を行うメンデルランダム化法により、日中の昼寝の頻度が高いことと、血圧およびウエスト周囲径が高いこととの間に、潜在的な因果関係があることが示された。


HCRTR1とHCRTR2は、ヒポクレチン (hypocretin、オレキシンorexinの別名)の受容体をコードする遺伝子です。オレキシンは、神経ペプチドの一種で、視床下部のニューロンに局在し、ニューロンの変性・脱落がナルコレプシーの原因であることが明らかになり、この物質が覚醒の維持に重要な役割を担っていることが明らかになっています。

記事ではポジティブに書かれていますが、昼寝を良くするのは覚醒や摂食を制御する様々な遺伝子の変異による遺伝病という可能性もあると思います。

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