Genomic sequencing of colorectal adenocarcinomas identifies a recurrent VTI1A-TCF7L2 fusion
以下は、論文要約の抜粋です。
研究者らは、原発性結腸直腸がんを含む9例の結腸直腸がん患者のがん組織とこれにマッチさせた正常組織の全ゲノム解析を行った。
その結果、1つのがん当たり平均75の体細胞ゲノム再編成が発見された。この中の11例は、融合蛋白質をコードすると予想され、VTI1A-TCF7L2の融合遺伝子は97例中3例の結腸直腸がんに認められた。また、この融合遺伝子をもつがん細胞の増殖には、VTI1A-TCF7L2融合遺伝子の発現が必要であることも確認された。
染色体転座などの体細胞ゲノム再編成によって生じた融合遺伝子が、細胞増殖を刺激する融合蛋白質をつくることによって発がんする例として、Bcr-AblやEML4-ALKの恒常的活性化キナーゼが良く知られています。さらに、RAFキナーゼも融合蛋白質形成によって活性化され、発がんに関与することが知られています。
キナーゼばかりではなく、BETファミリータンパク質の1つであるBRD4も転座によってNUTというタンパク質との融合タンパク質をつくり、NUT midline carcinoma(NMC)という致死性の高い悪性腫瘍を生じることが知られています。
今回も、発がんに関与する融合遺伝子が新しく見つかったという報告です。TCF7L2は、TCF/LEFファミリーに属するTCF4という転写因子をコードします。TCF4は、β-cateninと2量体を形成して腸上皮細胞の増殖を制御すると考えられています。しかし、今回発見された融合蛋白質にはβ-catenin結合ドメインは含まれておらず、どのようなメカニズムで細胞ががん化するのかは不明のようです。
世界中で、様々ながん組織の全ゲノム解析が行われていると思います。これらの作業が一通り終了した後、がんに関する我々の理解がどのように変わるのか、非常に楽しみです。
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