新規作用機序(β3受容体アゴニスト)の過活動膀胱治療薬ミラベグロン(ベタニス®)が承認取得

新規作用機序の過活動膀胱治療薬が承認取得-アステラス製薬
以下は、記事の抜粋です。


アステラス製薬は7月1日、過活動膀胱(OAB)治療薬ベタニスの承認を取得したと発表した。世界初の「選択的β3アドレナリン受容体作動薬」で、膀胱平滑筋に存在する同受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで、蓄尿機能を高めるという。

国内で実施したフェーズ3試験では、主要評価項目である24時間当たりの排尿回数の平均変化量において、プラセボ群に対する有効性が認められたという。

通常、成人には50mgを1日1回、食後に経口投与する。OABは、尿意切迫感を必須症状とし、頻尿、夜間頻尿、切迫性尿失禁などの症状を伴う機能障害。国内では、40歳以上の男女の8人に1人が患者と推定されるという。これまでの薬物療法では、アステラスのベシケアなど抗コリン剤が標準的治療薬となっていた。


過活動膀胱(overactive bladder:OAB)は、「尿意切迫感を有し、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば伴わないこともある状態」と定義されています。記事にあるように、ベタニス®(一般名:ミラベグロン)はβ3アドレナリン受容体を選択的に刺激するOAB治療薬です。

β3受容体は、約20年前に発見され、発見当初からしばらくは、脂肪組織に多く分布することや、64番目のトリプトファンがアルギニンに換わった変異が、肥満や糖尿病に関連することから、肥満や糖尿病、糖尿病発症の分子標的として注目されました。実際、多くのβ3受容体アゴニストが「やせ薬」として開発されましたが、すべて失敗に終わったそうです。

ところが、1998年頃から、ヒト膀胱平滑筋のβ受容体の97%がβ3であること、ヒト膀胱の弛緩がβ1やβ2ではなくβ3を介すること、ラットモデルで膀胱過活動が選択的β3アゴニストによって抑制されることなどが示され、OABに有効である可能性が示されました(論文をみる)。

一方、ベシケア®(一般名:ソリフェナシン)は、ムスカリン受容体阻害薬です。ムスカリン受容体にはM1、M2、M3、M4、M5などのサブタイプがあります。M1受容体は胃粘膜のほか、脳では学習・記憶に関与する大脳皮質や海馬に多く、アリセプト®(一般名:ドネペジル)で増えたアセチルコリンはM1受容体を刺激して抗認知症作用を発揮すると考えられています。

膀胱には、M2受容体もM3受容体も多いのですが、平滑筋収縮にはM3受容体が関与すると言われており、M3に比較的高い選択性を持つソリフェナシンがOABに有効な根拠と考えられています。ただ、ソリフェナシンのM3受容体に対する親和性はM1に対する親和性とあまり変わりません(Kiがそれぞれ12nMと26nM、論文をみる)。また、血液脳関門もかなり通過するようです(論文をみる)。

このように、ベシケア®(一般名:ソリフェナシン)には口渇、便秘、尿閉などの副作用だけではなく、認知症をもつOAB患者では認知症を悪化させる恐れもあります。ベタニス®(一般名:ミラベグロン)には、このような副作用はなさそうです。現在ベシケアの売り上げは世界で1000億円にとどく勢いだそうです。ベタニス®(一般名:ミラベグロン)もベシケアと同じかそれ以上に売れる可能性があると思います。

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